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非アルコール性脂肪性肝疾患の生命予後と糖尿病との関連(韓国の疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
非アルコール性脂肪性肝疾患の生命予後.jpg
British Medical Journal誌に、
2014年2月13日付で掲載された、
非アルコール性脂肪性肝疾患の生命予後についての論文です。

肝臓に脂肪(中性脂肪)が過剰に溜まった状態を、
脂肪肝と呼んでいます。

肝臓は元々、身体の余分な脂肪を、
中性脂肪という形にして貯めこむ倉庫のような場所ですが、
その倉庫が脂肪で満杯となって膨れ上がったような状態が脂肪肝です。

その過剰な脂肪が炎症を起こし、
肝臓の細胞を破壊してしまうような事態に陥った状態を、
脂肪肝炎と呼んでいます。

肝臓の細胞が炎症を起こして破壊されると、
細胞の中にあった酵素が血液中に漏れ出て来ます。
この酵素の代表がALT(GPT)なので、
一般に肝機能の指標とされているALTが上昇することは、
肝炎の重要な指標となっているのです。

お酒を過剰に飲むことによって起こるアルコール性肝障害では、
高率にアルコール性の脂肪肝炎が起こります。
しかし、最近殆ど飲酒をしない人でも、
脂肪肝や脂肪肝炎になることが注目され、
それを非アルコール性脂肪性肝疾患と、
非アルコール性脂肪肝炎と呼んでいます。

この非アルコール性脂肪性肝疾患は、
メタボリックシンドロームと関連が深く、
いずれも内臓脂肪の蓄積の1つの現れと、
考えることが出来ます。

メタボと関連の深い生活習慣病としては、
他に2型糖尿病があり、
いずれも動脈硬化を進行させ、
心臓病や脳卒中などのリスクを高めることが知られています。

しかし、
2型糖尿病と非アルコール性脂肪性肝疾患が合併した場合の、
動脈硬化性疾患のリスクや生命予後については、
精度の高い疫学データは不足しているのが実際です。

そこで今回の研究では韓国において、
20歳以上で1日アルコール30グラム以上の飲酒習慣のない、
7796793名の一般住民を対象とした健康調査のデータを活用して、
脂肪肝の簡易的指標である、
脂肪肝指数(Fatty Liver Index)により、
非アルコール性脂肪性肝疾患なし(脂肪肝指数30未満)、
非アルコール性脂肪性肝疾患の疑い(脂肪肝指数30以上60未満)、
非アルコール性脂肪性肝疾患(脂肪肝指数60以上)に分け、
動脈硬化性疾患のリスクと生命予後を、
2型糖尿病のあるなしで検証しています。
観察期間の中間値は8.13年です。

その結果、
対象者のうちの6.49%が2型糖尿病と診断され、
糖尿病のない人での非アルコール性脂肪性肝疾患の比率は、
10.02%であったのに対して、
糖尿病の患者さんでは、
その26.73%に非アルコール性脂肪性肝疾患が認められました。

2型糖尿病と非アルコール性脂肪性肝疾患のどちらもない人では、
心血管疾患のリスクは年間1000人当たり2.26件でしたが、
非アルコール性脂肪性肝疾患の疑い群では3.83件、
非アルコール性脂肪性肝疾患群では3.77件と、
そのリスクの増加が認められました。

2型糖尿病の患者さんでは、
心血管疾患のリスクは年間1000人当たり8.28件と、
糖尿病のない場合と比較して著明な増加を認めていて、
ここで非アルコール性脂肪性肝疾患の疑い群では9.19件、
非アルコール性脂肪性肝疾患群では8.34件と、
明確な増加とまでは言えない気がしますが、
よりリスクの高まる傾向を認めました。

総死亡のリスクについては、
糖尿病も非アルコール性脂肪性肝疾患のない群では、
年間1000人当たり3.03件でしたが、
非アルコール性脂肪性肝疾患疑い群では3.90件、
非アルコール性脂肪性肝疾患群では3.63件と、
これも微妙な感じはしますが、
リスクが増加する傾向は認めていました。

非アルコール性脂肪性肝疾患群のない2型糖尿病群では、
総死亡のリスクは年間1000人当たり11.64件と、
明確な増加を示していましたが、
そこに非アルコール性脂肪性肝疾患が加わっても、
明確な死亡リスクの増加は認められませんでした。

このように心血管疾患のリスクも総死亡のリスクも、
矢張り2型糖尿病において著明の増加していて、
2型糖尿病が生命予後に大きな影響を与える因子であることは、
間違いがありません。
非アルコール性脂肪性肝疾患は、
単独でも糖尿病ほどではありませんが、
心血管疾患リスクや総死亡のリスクを、
押し上げる因子にはなっていて、
疑いのレベルでも明確なリスク増加が認められる、
という点は重要な知見であると思います。
糖尿病と非アルコール性脂肪性肝疾患が併存すると、
そのリスクはより増加する傾向を示していますが、
糖尿病の影響の方がより顕著であるためか、
併存の場合のリスク増加は、
それほど明確なものとまでは言えませんでした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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