SSブログ

オランダにおける大腸癌検診の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
オランダの大腸癌検診の有効性.jpg
The Lancet Gastroenterology & Hepatology誌に、
2021年11月22日ウェブ掲載された、
便潜血による大腸癌検診の有効性を検証した論文です。

癌検診と称するものは非常に多く施行されていますが、
検診をすることで明確にその癌による死亡の減少が、
確認されているような検診は多くはありません。

その1つが便潜血や大腸の内視鏡検査(S状結腸のみの検査を含む)を活用した、
大腸癌検診(スクリーニング)です。

こうした知見を受けてオランダにおいては、
2014年より便のヒトヘモグロビンを感知する便潜血検査を、
55歳以上の年齢の国民全員に、
2年毎に施行することを繰り返し、
陽性であれば内視鏡検査などを二次検査として施行する、
大腸癌スクリーニングを行なっています。

今回のデータは、
2010年から2019年に掛けて診断された、
大腸癌の事例トータル125215名を、
大腸癌検診の施行前後と期間を分けて解析することで、
大腸癌検診の有効性を検証しているものです。

その結果、大腸癌の55歳以上の罹患率は、
検診施行前の2013年には、
人口10万人当たり214.3件であったのに対して、
開始後1年の2015年には259.2件に増加し、
2019年には181.5件に減少しています。
これは検診が導入されることによって、
それまで早期には発見されなかった大腸癌が、
多く発見されるようになったので、
一時的に罹患率は増加し、
その後数年を経て癌が早期に発見され治癒するようになったので、
罹患率は減少に転じたと考えることが出来ます。

年齢で補正した進行大腸癌(ステージ3と4)の罹患率は、
検診施行前の2013年には、
人口10万人当たり117.0件であったのに対して、
施行後1年の2015年には122.8件に増加し、
2018年には94.7件に減少しています。

年齢で補正した大腸癌死亡率も、
2010年には人口10万人当たり87.5件から、
2019年には64.8件に減少しています。

症状から疑われて診断された大腸癌と比較して、
左側の結腸に多く、早期癌が多く、
局所治療により対応可能が事例が多いという特徴が見られました。

このように、
便潜血による大腸癌検診により、
より早期の大腸癌が多く発見され治療により治癒することにより、
進行癌への進展が抑止され、
大腸癌による死亡のリスクが低下することが、
大規模な検証により明確に示されました。

便潜血による大腸癌検診は、
数少ない意義のある癌検診であると考えて、
大きな間違いはないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(4)  コメント(0) 

nice! 4

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。