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1人暮らしの高齢者の予後と社会的サポートとの関連 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は事務作業などの予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
独居老人の予後と社会的支援.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2021年11月15日ウェブ掲載された、
独居の高齢者の予後に与える、
親戚や友人のサポートの効果についての論文です。

独居の高齢者が増加していることは、
日本のみならず世界的にも、
高齢化が進行する社会の、
大きな公衆衛生上の問題です。

1人暮らしの高齢者は、
1人暮らしではない場合と比較して、
心血管疾患の予後が悪く、
うつ状態を来しやすく、
トータルな生命予後も悪いことが報告されています。

ただ、1人暮らしの高齢者といっても、
その実際の生活は様々で、
本当に身よりも友人もいない孤独な高齢者から、
何かあれば助けてくれるような友人も多く、
近くに親族も生活しているような、
自分の意思で1人暮らしをしているだけ、
というような人もいます。

それを、一律に「独居の高齢者」として解析することは、
正確な知見に至らないのではないでしょうか?

そこで今回の研究ではアメリカにおいて、
65歳以上の1人暮らしの高齢者で、
登録の時点でADLの自立している4772名を、
何かあった時にサポートしてくれる友人や親族がいるかどうかで分類し、
平均で4.9年の経過観察を施行。
その予後を比較検証しています。
このうちの38%に当たる1813名が、
サポートしてくれる友人や親族はいないと、
アンケートで回答していました。
そして、観察期間中に、
そのうちの63%に当たる3013名が、
入院や癌の診断、脳卒中や心臓の発作を来していました。

ここで、
観察期間2年の時点で老人ホーム(ナーシングホーム)に入所しているリスクは、
友人や親族のサポートがない場合が6.7%であった一方、
サポートのある場合は5.2%で、
社会的サポートは老人ホーム入所のリスクを、
有意に低下させていました。

入院や癌の診断、脳卒中や心臓発作を来した場合、
2年を超える期間での老人ホーム入所のリスクは、
友人や親族のサポートのない場合が14.2%であった一方で、
サポートのある場合は10.9%で、
社会的サポートは2年を超える期間での老人ホーム入所のリスクも、
有意に低下させていました。
しかし、入院などの健康問題が生じていない場合には、
2年を超える期間での老人ホーム入所のリスクには差は認められませんでした。
また、死亡のリスクやADL低下のリスクには、
社会的サポートのあるなしとの有意な関連は認められませんでした。

このように、
頼れる友人や親族のいることは、
独居の高齢者の予後改善に、
一定の影響を与えることは間違いがなさそうです。
ただ、その影響は限定的なもので、
今後独居高齢者への有効な対策を考える上では、
より詳細な検証が必要と考えられます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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