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慢性腎臓病の予後と性差との関係 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
急性腎不全の予後と性差との関連.jpg
British Medical Journal誌に、
2021年11月16日ウェブ掲載された、
腎臓病の予後と男女の性別との関連についての論文です。

男と女にこんな違いがある、
というような話は、
一般的なレベルでは、
むしろタブーのような扱いになりつつありますが、
遺伝子レベルの性差が、
病気の予後などに与える影響については、
科学的な意味で一定の意義のある情報であることは、
現在でも変わりはありません。

ただ、何処までが生まれ持っての性別の影響であり、
何処からが環境などの社会的な要因であるのか、
というような点については、
不明の点も多いのが実際です。

慢性腎臓病は腎臓の機能が一定レベル低下した状態のことで、
それが進行して腎機能が高度に低下した状態が腎不全です。

この慢性腎臓病は罹患率としては、
男性より女性に多いとされていますが、
その一方で透析が導入されるような腎不全の罹患率は、
女性より男性が多くなっていて、
これは男性の方が腎臓病の進行はより速い、
ということを示していると説明されています。

ただ、実際に腎不全の生命予後に、
男女差があるかどうかについては、
これまであまり信頼のおけるデータがありませんでした。

今回の研究は、
オーストラリアとニュージーランドにおいて、
82844名の腎不全の患者の経過と性差との関連を、
透析や腎移植の疫学データから解析したものです。

その結果、
一般人口と比較した場合の腎不全患者の生命予後は、
男性より女性で死亡リスクが有意に増加していました。
この性差は特に若い年齢層で強く見られ、
心血管疾患による死亡リスクにおいて顕著でした。
年齢などで補正した死亡リスクは、
男性より女性で11%(95%CI:8から13)高く、
腎不全による生存期間の短縮幅も、
男性と比較して女性では3.6年(95%CI:3.6から3.7)短くなっていました。

つまり、
女性が一旦腎不全になると、
その生命予後は男性より悪く、
特に心血管疾患による死亡のリスクが増加する、
という結果です。

この結果が遺伝子レベルのものなのか、
環境要因などによる二次的なものなのかは不明ですが、
腎不全の診療においては、
性差によりその予後に性差のあることを念頭において、
その対応にも慎重な配慮が必要であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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