SSブログ

糖尿病の患者さんの熱中症予防について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
糖尿病と暑熱順化.jpg
2019年のJAMA誌のレターですが、
糖尿病の患者さんの熱中症予防についての研究です。

つい最近掲載されたもので、
ちょっと季節外れという感じはあるのですが、
興味深いテーマなので、
忘れないうちに記録しておくことにしました。

最近夏場になると必ず問題となるのが熱中症です。

熱中症は高温の状態に身体がさらされることにより、
体温を一定レベルに保とうとする身体の調節機能を超えて、
異常に体温が上昇して、
高度の脱水や電解質異常など、
身体に深刻な影響を与える病気です。

高温にさらされた時に、
体温の上昇を防ぐための身体の仕組みは、
主に沢山の汗をかいて、
その汗が蒸発する気化熱で身体を冷やすことです。

従って、
高温の環境において速やかに身体が反応し、
より多くの汗をかくことが重要となります。

熱中症になりやすい病気として、
指摘されることが多いのが糖尿病です。

これは何故かと言うと、
糖尿病では脱水状態になりやすく、
脱水状態では発汗量が低下するので、
体温を下げる力が弱いということが、
まず考えられます。

また、糖尿病が進行すれば、
自律神経障害を合併していて、
そのために皮膚表面の血流が低下し、
暑さを感じた時の身体の反応も悪い、
というような自律神経の関与も想定される要因の1つです。

ただ、こうした推測はあっても、
実際に糖尿病の患者さんとそうでない人を比較して、
熱中症のなりやすさを比較したようなデータは限られたものしかありません。

今回の研究はカナダにおいて、
運動習慣のある50歳から70歳の、
糖尿病の患者さん17名と、
年齢などをマッチングさせた、
糖尿病のないコントロール17名に、
40℃という高温環境で、
1日90分のサイクリングの運動を施行し、
その時の発汗による体温調節反応を比較しています。

その結果、
コントロールと比較して糖尿病の患者さんでは、
運動に反応した体温調節反応は有意に低下していました。

そこで、
高温に身体を慣らすために、
最大酸素摂取量の半分程度の負荷の運動を、
1日90分で7日間連続し、
その後に同じ高温下の運動を行うと、
その体温調節反応の改善は、
コントロール群をしのぐレベルになっていました。

つまり、
糖尿病の患者さんでは通常の状態での、
高温時の体温調節反応は低下していて、
発汗量も少ないのですが、
1週間程度の順化の時間があると、
その改善は大きなものが期待出来る、
ということになります。

熱中症になりやすい病気を持つ患者さんの方が、
より積極的に暑さに身体を慣らすことが必要であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(7)  コメント(0) 

nice! 7

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。