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中性脂肪降下剤フェノフィブラートの心血管疾患予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
フェノフィブラートの新規エビデンス.jpg
2019年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
中性脂肪降下剤の心血管疾患予防効果についての論文です。

コレステロール特にLDLコレステロールが高いことが、
心筋梗塞などの心血管疾患のリスクになることは、
多くの疫学データにより確認されていて、
スタチンというコレステロール降下剤を使用することで、
そのリスクが高い人においては、
心血管疾患の予防効果のあることも実証されています。

ただ、心血管疾患のリスクのあるメタボリックシンドロームの人に、
スタチンで充分にコレステロール値を低下させても、
それでメタボのない人と同じようにリスクが低下することはありません。

つまり、心血管疾患の予防のためには、
コレステロールを下げるだけでは充分ではないのです。

それでは、他に介入可能なリスクは何かあるのでしょうか?

その候補の1つとして想定されているのが中性脂肪です。

中性脂肪の高値が、
コレステロールとは独立して、
心血管疾患のリスクであることは、
ほぼ間違いのない事実であると考えられています。

ただ、中性脂肪は食事などによる変動が非常に大きく、
どのような基準で低下させることが、
心血管疾患の予防に結び付くのか、
というような点については明確なことが分かっていません。

中性脂肪を低下させる薬として、
フィブラート製剤と呼ばれる薬剤が、
一般臨床において使用されていますが、
その有効性はスタチンほど明確には証明されていません。

フェノフィブラートは代表的なフィブラート製剤の1つですが、
2000年代初頭に糖尿病の患者さんで施行された介入試験では、
トータルには治療による心血管疾患の予防効果は確認されませんでした。
ただ、サブ解析では動脈硬化のリスクの高い脂質異常症群において、
一定の予防効果が示唆されました。

この問題はまだ結論が出ていないのです。

今回の疫学研究は韓国のもので、
40歳以上でメタボリックシンドロームがあり、
スタチンの治療をしている29771名を抽出し、
そのうちの2156名はフェノフィブラートとスタチンを併用していたので、
この2156名を年齢などで1対5にマッチングさせた、
スタチン単独治療の8549名と比較して、
スタチンに上乗せされたフェノフィブラートの、
心血管疾患予防効果を検証しています。
メタボの基準の1つとなる腹囲は、
日本では男性85センチ以上、女性90センチ以上ですが、
今回の韓国の基準は男性90センチ以上、女性80センチ以上で、
これは欧米の基準に準じたものです。

その結果、
スタチン単独治療と比較して、
フェノフィブラートの上乗せ治療は、
心血管疾患のリスクを、
26%(95%CI: 0.58から0.93)有意に低下させていました。

今回の検証は、
最初から患者さんを登録して行うような試験ではないので、
それほど信頼性の高いものではありませんが、
中性脂肪の予防効果は、
日本を含めて東アジア地域の臨床データで主に確認されていて、
東アジアにおいてはこうした薬の有効性が高い、
という可能性は否定出来ません。

今後より精度の高い臨床試験において、
こうした治験が検証されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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