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男性ホルモンの女性の性欲低下に対する有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
テストステロンの女性への効果.jpg
2019年のLancet Diabetes & Endcrinology誌に掲載された、
女性に対して男性ホルモンのテストステロンを使用するという、
興味深い治療法の評価についての論文です。

性ホルモンには女性ホルモンと男性ホルモンとがあり、
基本的には女性は女性ホルモンを分泌し、
男性は男性ホルモンを分泌しています。

ただ、それでは女性は100%女性ホルモンのみを分泌しているかと言うと、
実はそうではなくて、
女性も男性の10分の1から20分の1程度の男性ホルモンを作り、
分泌しています。

この女性における少量の男性ホルモンが、
どのような働きをしているのかは不明の点が多いのですが、
筋力を維持し増進するような作用は男性ホルモンに強いので、
女性の筋力維持の下支えになっているという考え方は出来ます。
そして、もう1つほぼ明確なのが、
性欲や性衝動の維持に、
女性における男性ホルモンが影響しているという知見です。

そのため、性欲減退を訴える主に閉経後の女性に対して、
男性ホルモンのテストステロンの製剤を、
使用することがしばしば行われています。

ただ、その有効性や安全性についてはまだ不明の点が多く、
国際的なガイドラインのような物も、
現時点では存在していません。

今回の研究はこれまでの女性に対する男性ホルモン治療を扱った、
臨床試験のデータをまとめて解析した、
システマティックレビューとメタ解析で、
これまでの36の介入試験の、
トータルで8480名の患者データが解析されています。

その結果、
性欲減退のある閉経後の女性に対する男性ホルモンの治療は、
偽薬や女性ホルモン製剤との比較において、
性機能を有意に改善し、
性欲減退に対する効果が確認されました。

その使用により体重増加や体毛の増加、
ニキビなどが認められたものの、
概ね有害事象は軽微で、
内服の製剤より外用剤において、
より有害事象は少なくなっていました。

このように閉経後の女性で、
性欲減退などの性関連の愁訴がある場合には、
外用剤としてテストステロン製剤を使用することには、
一定の有効性と有益性が認められるようです。

日本では一般にはこうした試みは、
まだあまりされていないと思いますが、
高齢化社会においては、
こうした治療も重要であるという側面もあり、
今後の検証や適正なガイドラインの作成を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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