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「ジョーカー」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ジョーカー.jpg
バットマンのコミカルな悪役ジョーカーを、
70年代のアメリカニューシネマのスタイルで、
ひたすら救いなく暗い物語として再構築した、
話題の映画に足を運びました。

これはね、映像のスタイルからタイトルやエンドクレジットまで、
もろアメリカンニューシネマをなぞった映画で、
ほぼほぼ「タクシードライバー」です。
かつての「タクシードライバー」の主役であった、
ロバート・デ・ニーロを、
過去の笑いの帝王として登場させ、
彼を○○することにより、
新しい悪の象徴が誕生する、という物語になっています。

体裁は「バットマン」の前日談で、
ニューヨークの並行世界のような、
ゴッサムシティが登場し、
1970年代から80年代というテイストで、
少年期のブルース・ウェイン(バットマン)が登場します。

ジョーカーを演じたホアキン・フェニックスの怪演は、
好き嫌いはともかくかなりのインパクトがありますし、
彼がデニーロと対決する場面は、
色々な意味で象徴的であり衝撃的です。

バックグラウンドには色々と仕掛けがありますが、
冗談で渡された拳銃が不意に火を噴くところから、
社会の阻害された無垢な善人が、
悪の権化に変貌してゆくというのも、
犯罪映画の典型的なパターンで、
ワンカットで不意打ちのように銃が火を噴いて相手が倒れるのは、
黒沢清監督の映画も彷彿とさせます。
これを元をたどれば、
70年代のB級アクション映画のスタイルです。

このようにかなり意図的にノスタルジックで、
過去の再構築的な犯罪映画ですが、
問題はそれがあまりバットマンの世界と溶け合ってはいないことで、
ジョーカーの扮装にしても、
ウェインの大邸宅にしても、
そうしたものが登場する途端に、
画面は噓臭くなってしまいます。

この古典的な暗黒犯罪映画と、
DCコミックの世界の水と油の融合を、
「これもありだね」と思うか、
「いくら何でも無理があるじゃん」と思うかが、
この映画を容認出来るかどうかの分かれ目で、
個人的には僕は駄目でした。

何か珍妙な映画ですね。

「タクシードライバー」には、
何が起こるか分からないようなショックがあるでしょ。
予備知識なく観ていると、
ラストにあんな風な過激な描写になるとは想像出来ないので、
それが面白いんですよね。
今回の「ジョーカー」は話は同じなのですが、
最初から「悪の誕生」という前提が出来てしまっているので、
話に意外性や意外な展開が皆無でしょ。
それはもう仕方のないことなのですが、
矢張り映画としてはガッカリとは思うのです。

それから、笑いの世界を描いていながら、
スタンダップコメディの世界とか、
あまりそれらしく描かれていないですよね。
せっかくコメディ畑の監督を起用して、
おそらくそうした狙いが当初はあったのではないかと思うのですが、
それが全く活かされていないのが、
これも残念に感じました。
そこは主役の役作りのせいかも知れないですね。
彼の演技のトーンと、
笑いの世界は正反対のように思えるからです。

そんな訳で個人的にはあまり乗れませんでした。

ただ、完成度の高い映画ではあると思いますし、
好きな方は好きなタイプの映画ではないかと思います。

確実に万人向けではなく、
絶賛の著名人のコメントの8割くらいは、
多分「言わされコメント」なので、
その点は注意の上お出かけ下さい。
「とても仰々しくリメイクされたタクシードライバー」
というのがおそらくこの映画の本質です。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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