「ホテル・ムンバイ」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
2008年のインドの同時多発テロ事件を扱った、
オーストラリアとインド、アメリカの合作映画を観て来ました。
監督はオーストラリアの人で、
キャストは多国籍ですが、
ほぼインドで撮影され、
英語とヒンドゥー語の入り混じる、
とてもリアルな仕上がりになっています。
2008年の実話がモデルで、
イスラムの過激派の指示により、
10代くらいのテロリストがムンバイの町に送り込まれ、
駅などの街の中心地で無差別に銃を乱射し爆破を繰り返した後で、
高級ホテルに集結してホテルの客やスタッフを、
こちらも徹底的に無差別に殺戮してゆきます。
主人公はインド人のホテルマンで、
彼ばかりではなくテロリストを含めた多視点で、
この壮絶で悲惨なサバイバルが再現されます。
スタイルはハリウッドのアクション映画に近いような感じで、
ほぼ「ダイ・ハード」なのですが、
主人公のブルース・ウィリスのいない「ダイ・ハード」です。
後半は現実の映像とドラマの入り混じる、
昔のオリバー・ストーンみたいなタッチになります。
これは相当怖いです。
作りはアクション映画なのですが、
内容はリアリズムなのですよね。
必死で逃げるのですが、子供のような兵士に、
無雑作にバンバン殺されます。
僕達はもう昔観ていたアクション映画と同じ世界に生きていて、
いつ殺されるのかも分からない、という事実を、
とてもリアルに突き付けられます。
それでいて昔の映画のようなヒーローは何処にもいません。
いつ来るのかも分からない政府の特殊部隊を期待して、
必死に隠れ、逃げる以外にはないのです。
怖いですよね。
こんな身も蓋もないような映画は、
昔は成立しなかったと思うんですよね。
それを成立させてしまったのが凄いし、
今という時代はそこまで来てしまったのだな、
という気分にもなります。
ラストまで観ると、
主人公は矢張り多くのホテルマンで、
彼らが客を守ろうと必死に戦った、
ということが主眼になっていることが分かります。
ただ、それを殊更にフィクションにして盛り上げていない、
という点がこの映画の1つの美点で、
人間というのは結局与えられた役柄を生きていて、
それがテロリストであればそうなり、
「お客様が神様」であればそうなり、
「ホテルの従業員を見下す金持ち」であればそうなる、
というだけの話のようにも思えます。
命も確かに惜しいのだけれど、
子供のために自分を犠牲にしよう、
という気持ちにもなる一方、
家族がいるから、逃げてしまおう、
という気持ちにもなる訳です。
自己犠牲というのは1つの人間の美点であるけれど、
それを美化し過ぎるとテロリストにむしろ近づいてしまう。
そんな怖さも同時に感じました。
こうした多視点の魅力、
善悪や正義や人間はどうあるべき、
というような事項を1つに固めないで提示する、
というところがこの映画の素晴らしさだと思いますが、
その一方でピントのはっきりしない、
何かすっきりしない映画になっていることもまた事実です。
この辺は難しいところだと思います。
ディテールとしては、
テロリストを遠隔指示している指導者が、
CNNを見ていて、
閉じ込められた客からの情報などがテレビで流れてしまうので、
それで脱出作戦が見抜かれてしまう、
という件などは、
現代ならではの情報の怖さで印象に残りました。
いずれにしても現代の恐怖と、
その中での人間の本質をリアルに活写した力作で、
今年見逃せない1本であることは間違いがありません。
お時間のある方は是非。
怖いですよ。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
2008年のインドの同時多発テロ事件を扱った、
オーストラリアとインド、アメリカの合作映画を観て来ました。
監督はオーストラリアの人で、
キャストは多国籍ですが、
ほぼインドで撮影され、
英語とヒンドゥー語の入り混じる、
とてもリアルな仕上がりになっています。
2008年の実話がモデルで、
イスラムの過激派の指示により、
10代くらいのテロリストがムンバイの町に送り込まれ、
駅などの街の中心地で無差別に銃を乱射し爆破を繰り返した後で、
高級ホテルに集結してホテルの客やスタッフを、
こちらも徹底的に無差別に殺戮してゆきます。
主人公はインド人のホテルマンで、
彼ばかりではなくテロリストを含めた多視点で、
この壮絶で悲惨なサバイバルが再現されます。
スタイルはハリウッドのアクション映画に近いような感じで、
ほぼ「ダイ・ハード」なのですが、
主人公のブルース・ウィリスのいない「ダイ・ハード」です。
後半は現実の映像とドラマの入り混じる、
昔のオリバー・ストーンみたいなタッチになります。
これは相当怖いです。
作りはアクション映画なのですが、
内容はリアリズムなのですよね。
必死で逃げるのですが、子供のような兵士に、
無雑作にバンバン殺されます。
僕達はもう昔観ていたアクション映画と同じ世界に生きていて、
いつ殺されるのかも分からない、という事実を、
とてもリアルに突き付けられます。
それでいて昔の映画のようなヒーローは何処にもいません。
いつ来るのかも分からない政府の特殊部隊を期待して、
必死に隠れ、逃げる以外にはないのです。
怖いですよね。
こんな身も蓋もないような映画は、
昔は成立しなかったと思うんですよね。
それを成立させてしまったのが凄いし、
今という時代はそこまで来てしまったのだな、
という気分にもなります。
ラストまで観ると、
主人公は矢張り多くのホテルマンで、
彼らが客を守ろうと必死に戦った、
ということが主眼になっていることが分かります。
ただ、それを殊更にフィクションにして盛り上げていない、
という点がこの映画の1つの美点で、
人間というのは結局与えられた役柄を生きていて、
それがテロリストであればそうなり、
「お客様が神様」であればそうなり、
「ホテルの従業員を見下す金持ち」であればそうなる、
というだけの話のようにも思えます。
命も確かに惜しいのだけれど、
子供のために自分を犠牲にしよう、
という気持ちにもなる一方、
家族がいるから、逃げてしまおう、
という気持ちにもなる訳です。
自己犠牲というのは1つの人間の美点であるけれど、
それを美化し過ぎるとテロリストにむしろ近づいてしまう。
そんな怖さも同時に感じました。
こうした多視点の魅力、
善悪や正義や人間はどうあるべき、
というような事項を1つに固めないで提示する、
というところがこの映画の素晴らしさだと思いますが、
その一方でピントのはっきりしない、
何かすっきりしない映画になっていることもまた事実です。
この辺は難しいところだと思います。
ディテールとしては、
テロリストを遠隔指示している指導者が、
CNNを見ていて、
閉じ込められた客からの情報などがテレビで流れてしまうので、
それで脱出作戦が見抜かれてしまう、
という件などは、
現代ならではの情報の怖さで印象に残りました。
いずれにしても現代の恐怖と、
その中での人間の本質をリアルに活写した力作で、
今年見逃せない1本であることは間違いがありません。
お時間のある方は是非。
怖いですよ。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2019-10-05 08:40
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コメント(1)
遅ればせながら昨日観てきました。
2008年のインドの同時多発テロは,私はあまり詳しく知らなかったので,
実話に基づいた惨劇ということに,最初から最後までとてもとても怖かった。
実行犯の若者の純粋さや幼さや貧困と,それを神の名のもとに利用した勢力の残忍さ,
主人公のホテルマンやスタッフの,お客様を守るという誇りと矜持に,
いろいろ考えるところがありました。
自分がこの世に生を受けてこの歳まで曲がりなりにも無事に生きていられることこそが,
実は奇跡に近いものなのかもしれないと思いました。
観て良かったです。
またいろいろご紹介ください。
by midori (2020-03-17 20:51)