三谷幸喜脚色「抜目のない未亡人」 [演劇]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
今日は日曜日で診療所は休診です。
明日月曜日(7月14日)は、
石原が健診説明会出席のため、
午後の診療は午後5時で終了とさせて頂きます。
受診予定の方はご注意下さい。
朝からいつものように、
駒沢公園まで走りに行って、
それから今PCに向かっています。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
18世紀に書かれたイタリア艶笑喜劇の古典を、
三谷幸喜さんが自由自在に脚色して、
小劇場的にはかなり豪華なキャストで上演した作品が、
今新宿の新国立劇場で上演中です。
三谷幸喜さんは八面六臂の活躍をされていますが、
映画はかつての伊丹十三映画の後期のように、
絶賛されるか無視されるかのどちらかの評価しかされない、
という状況で、
個人的には殆ど興味はありません。
劇作は最近は新作のヒットがなく、
翻訳劇と旧作の再演が主となっているのは、
結構分岐点に立っているのだと推察しますが、
ちょっと苦しい感じがします。
今回の作品は、
古典艶笑喜劇を元にしていますが、
時代は現代に移し、設定自体も大幅に変えているので、
実際にはほぼ三谷さんの新作と言って良いものです。
ただ、これが仮に三谷さんの新作として上演されれば、
「古臭い」というような批判が当然出る内容で、
新味のなさを誤魔化したような感じが、
ちょっと釈然としない部分はあるのですが、
キャストは豪華で、
演出も開放的で陽性で洗練されていて、
全てにおいて新味は欠片もありませんが、
肩肘張らずに楽しむには、
悪い作品ではないと思います。
正直僕は個人的にはとても納得はいきませんが、
終演後のお客さん達の表情は一様に満足げに和んでいて、
これはこれで悪くなかったようにも思いました。
以下ネタばれを含む感想です。
舞台はベネツィア映画祭の最中の現代のべネツィアで、
超一流のホテルの目の前に、
それより少し格下のホテルがあって、
そこには超一流より少し落ちる映画人が集まっている、
という趣向です。
舞台はそのホテルの海に面した石畳のオープンテラスで、
背後に海が見えます。
金持ちの老人の夫を亡くしたばかりの、
かつての名女優に大竹しのぶが扮し、
その復帰作を自分の手に射止めようと、
4人の曰くありげな映画監督が、
しのぎを削る様が、
女優の妹や父親、亡夫の弟などの思惑とも絡み合い、
一夜の愛すべきドタバタ喜劇として演じられます。
登場するのは勿論全て外国人です。
4人の映画監督には、
段田安則、高橋克実、岡本健一、中川晃教が扮し、
大竹しのぶの演じる大女優のエージェントに峯村リエ、
父親に小野武彦、
売れない女優の妹に木村佳乃、
亡夫の弟に浅野和之、
狂言回しのホテル従業員に八嶋智人という豪華な布陣です。
ストーリーにはそれほどの捻りはなく、
一夜の贅沢なお遊びが、
つつがなく終了する、と言う感じです。
従って、物語を楽しむと言うよりは、
次々と登場する役者さんの技芸を楽しむのが眼目です。
メインは勿論大竹しのぶさんで、
天真爛漫な大女優を大仰に演じ、
後半は仮装舞踏会となるので、
扮装を変えて色々な役柄を演じ分けるという趣向です。
僕は大竹しのぶさんのことは非常に好きで、
最初に野田秀樹とタッグを組んだ「国姓爺合戦」の舞台などは、
未だ強烈に脳裏に焼き付いていますが、
野田さんのところで覚えて来た、
変なべらんめえ口調が鼻に付いて、
藝が最近では明らかに荒れているので、
最近の舞台は感心するものがありません。
彼女は聖少女のような心根を持っていて、
それを無垢に表現するところに、
その最も優れた藝質があると思うのですが、
今回もいつも通りの荒れた芝居で、
不必要に笑いを取ろうとするので、
そうした良さが欠片も感じられないのは、
個人的には非常に残念でした。
そろそろ野田さんの小芝居の呪縛から、
離れて欲しいと切に願います。
今回の舞台に関しては、
黒柳徹子さんを見ているのかと思いました。
豪華な共演陣はその出来不出来の差が大きく、
遠山俊也さんや春海四方さんは、
何のために出演しているのかまるで分かりませんし、
小野武彦さんや木村佳乃さんも扱いが小さくて残念な感じです。
段田安則さんもとても生彩のないままに終わっています。
浅野和之さんや峯村リエさんは、
さすがに芸達者なところを見せましたが、
この人達のこれまでの怪演の数々から言えば、
今回は抜いた感じの芝居で、
不完全燃焼に終わっています。
1人元気いっぱいだったのは八嶋さんだけで、
舞台狭しと駆け回って、
1人だけ観客にも語り掛ける役柄です。
ただ、作品全体として見れば、
八嶋さんが一番目立つようでは、
矢張り何処か問題があるように思います。
三谷さんとしてはソツのない仕事で、
今回は特に陽性の演出に見所がありました。
ただ、大竹さんには多分、
期待と実際とのギャップがあったのではないかと思いますし、
役者さんの顔ぶれが不必要に豪華過ぎて、
役者さんに全て見せ場を用意することに長けた三谷さんには珍しいことに、
その扱いにはかなり凹凸が激しかったように思いました。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
下記書籍引き続き発売中です。
よろしくお願いします。
六号通り診療所の石原です。
今日は日曜日で診療所は休診です。
明日月曜日(7月14日)は、
石原が健診説明会出席のため、
午後の診療は午後5時で終了とさせて頂きます。
受診予定の方はご注意下さい。
朝からいつものように、
駒沢公園まで走りに行って、
それから今PCに向かっています。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
18世紀に書かれたイタリア艶笑喜劇の古典を、
三谷幸喜さんが自由自在に脚色して、
小劇場的にはかなり豪華なキャストで上演した作品が、
今新宿の新国立劇場で上演中です。
三谷幸喜さんは八面六臂の活躍をされていますが、
映画はかつての伊丹十三映画の後期のように、
絶賛されるか無視されるかのどちらかの評価しかされない、
という状況で、
個人的には殆ど興味はありません。
劇作は最近は新作のヒットがなく、
翻訳劇と旧作の再演が主となっているのは、
結構分岐点に立っているのだと推察しますが、
ちょっと苦しい感じがします。
今回の作品は、
古典艶笑喜劇を元にしていますが、
時代は現代に移し、設定自体も大幅に変えているので、
実際にはほぼ三谷さんの新作と言って良いものです。
ただ、これが仮に三谷さんの新作として上演されれば、
「古臭い」というような批判が当然出る内容で、
新味のなさを誤魔化したような感じが、
ちょっと釈然としない部分はあるのですが、
キャストは豪華で、
演出も開放的で陽性で洗練されていて、
全てにおいて新味は欠片もありませんが、
肩肘張らずに楽しむには、
悪い作品ではないと思います。
正直僕は個人的にはとても納得はいきませんが、
終演後のお客さん達の表情は一様に満足げに和んでいて、
これはこれで悪くなかったようにも思いました。
以下ネタばれを含む感想です。
舞台はベネツィア映画祭の最中の現代のべネツィアで、
超一流のホテルの目の前に、
それより少し格下のホテルがあって、
そこには超一流より少し落ちる映画人が集まっている、
という趣向です。
舞台はそのホテルの海に面した石畳のオープンテラスで、
背後に海が見えます。
金持ちの老人の夫を亡くしたばかりの、
かつての名女優に大竹しのぶが扮し、
その復帰作を自分の手に射止めようと、
4人の曰くありげな映画監督が、
しのぎを削る様が、
女優の妹や父親、亡夫の弟などの思惑とも絡み合い、
一夜の愛すべきドタバタ喜劇として演じられます。
登場するのは勿論全て外国人です。
4人の映画監督には、
段田安則、高橋克実、岡本健一、中川晃教が扮し、
大竹しのぶの演じる大女優のエージェントに峯村リエ、
父親に小野武彦、
売れない女優の妹に木村佳乃、
亡夫の弟に浅野和之、
狂言回しのホテル従業員に八嶋智人という豪華な布陣です。
ストーリーにはそれほどの捻りはなく、
一夜の贅沢なお遊びが、
つつがなく終了する、と言う感じです。
従って、物語を楽しむと言うよりは、
次々と登場する役者さんの技芸を楽しむのが眼目です。
メインは勿論大竹しのぶさんで、
天真爛漫な大女優を大仰に演じ、
後半は仮装舞踏会となるので、
扮装を変えて色々な役柄を演じ分けるという趣向です。
僕は大竹しのぶさんのことは非常に好きで、
最初に野田秀樹とタッグを組んだ「国姓爺合戦」の舞台などは、
未だ強烈に脳裏に焼き付いていますが、
野田さんのところで覚えて来た、
変なべらんめえ口調が鼻に付いて、
藝が最近では明らかに荒れているので、
最近の舞台は感心するものがありません。
彼女は聖少女のような心根を持っていて、
それを無垢に表現するところに、
その最も優れた藝質があると思うのですが、
今回もいつも通りの荒れた芝居で、
不必要に笑いを取ろうとするので、
そうした良さが欠片も感じられないのは、
個人的には非常に残念でした。
そろそろ野田さんの小芝居の呪縛から、
離れて欲しいと切に願います。
今回の舞台に関しては、
黒柳徹子さんを見ているのかと思いました。
豪華な共演陣はその出来不出来の差が大きく、
遠山俊也さんや春海四方さんは、
何のために出演しているのかまるで分かりませんし、
小野武彦さんや木村佳乃さんも扱いが小さくて残念な感じです。
段田安則さんもとても生彩のないままに終わっています。
浅野和之さんや峯村リエさんは、
さすがに芸達者なところを見せましたが、
この人達のこれまでの怪演の数々から言えば、
今回は抜いた感じの芝居で、
不完全燃焼に終わっています。
1人元気いっぱいだったのは八嶋さんだけで、
舞台狭しと駆け回って、
1人だけ観客にも語り掛ける役柄です。
ただ、作品全体として見れば、
八嶋さんが一番目立つようでは、
矢張り何処か問題があるように思います。
三谷さんとしてはソツのない仕事で、
今回は特に陽性の演出に見所がありました。
ただ、大竹さんには多分、
期待と実際とのギャップがあったのではないかと思いますし、
役者さんの顔ぶれが不必要に豪華過ぎて、
役者さんに全て見せ場を用意することに長けた三谷さんには珍しいことに、
その扱いにはかなり凹凸が激しかったように思いました。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
下記書籍引き続き発売中です。
よろしくお願いします。
健康で100歳を迎えるには医療常識を信じるな! ここ10年で変わった長生きの秘訣
- 作者: 石原藤樹
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2014/05/14
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
2014-07-13 09:06
nice!(15)
コメント(6)
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私も大竹しのぶさん大好きです! 子どもの頃、テレビで「ああ野麦峠」(映画)を見て、かわいいのにすごいなあ!と。
by のりのり (2014-07-14 22:39)
のりのりさんへ
コメントありがとうございます。
矢張り稀有の女優さんだと思います。
ただ、最近の悪乗り芝居は好きではありません。
by fujiki (2014-07-15 08:18)
はじめまして。
観に行く演目が似通っていることが多く、興味深く感想を拝見
させていただいています。
大竹しのぶさんについて、最近感じていたことを、言葉にして
いただいた感じで、なるほど、と思いました。
「べらんめえ口調で、荒れた芝居」
まさに、どの作品でも、そんな感じですよね。
存在感があって、しのぶ祭りになりやすいし。
身毒丸でも、最後のシーンは、大竹しのぶがなでしこなら、さも
ありなん、と思いました。
好きな女優さんですしすごいな、と思うことも多いのですが、
このままいっちゃうのは残念です。
あと、三谷さんが、最近毒気がないのも同感で、ちょっと物足りない
です。
by クッキー・ママ (2014-07-15 13:13)
クッキー・ママさんへ
コメントありがとうございます。
ご指摘の通りで、
このままいってしまうのは、
才能のある方ですし残念なのですが、
もう誰かが指摘出来る、
というようなポジションではないのかも知れませんね。
by fujiki (2014-07-16 08:08)
はじめまして!
「抜目のない未亡人」に、もやもやと感じていたことを皆、書いて戴いたように感じ、興味深く拝読いたしました。
大竹さんは好きで上手い女優さんだと思うのですが、「しのぶ節」・・そうですね、臭さが残念だと思う舞台が多くなりました。
三谷さんとしては「大竹しのぶを使った」だけの舞台になったように感じます。
ただ、この役なら、他の方でも普通に出来た、ように思います。「大竹しのぶ」を使うなら、もっと違った「あてがき」が出来るでしょうに、三谷さんも、大竹さんも、最近はちょっと残念なことが多いですね。
by まぇ (2014-07-26 22:02)
まえさんへ
コメントありがとうございます。
確かに満を持して大竹さんを使ったのに、
何となく物足りない内容だったように思います。
多分色々と裏事情はあったのではないでしょうか。
これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2014-07-28 08:17)