フィナステリドによる前立腺癌予防の有効性 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療の予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2019年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載されたレターですが、
フィナステリドという前立腺における男性ホルモン作用の抑制剤の、
前立腺癌予防効果を検証したものです。
フィナステリド(プロペシア)は、
5α還元酵素Ⅱ型の阻害剤で、
組織における男性ホルモンの作用をブロックすることにより、
日本では現状脱毛症の治療薬として使用されています。
一方で欧米においては、
脱毛症より多い用量を用いて、
前立腺肥大症の治療薬として使用されています。
前立腺の組織は男性ホルモンの刺激により増殖するので、
フィナステリドは前立腺肥大を改善し、
前立腺を縮小する効果があります。
前立腺癌も男性ホルモン反応性であるので、
フィナステリドを継続使用することにより、
前立腺癌の予防効果があるのではないか、
という可能性が推測されます。
それを検証した臨床試験が行われ、
その結果が2003年のNew England…誌に掲載されました。
それがこちらです。
この55歳以上の18882名を登録して開始された、
大規模な臨床試験の結果によると、
7年間の経過観察でフィナステリドは、
前立腺癌の発症率を24.8%有意に低下させていました。
しかし、その一方でグリソンスコアで7点以上という、
悪性度の高い癌に関しては、
その比率がフィナステリド群で増加していました。
この試験はその後も経過観察が継続され、
トータルで18年間の観察結果をまとめた報告が、
2013年のNew England…誌に再度掲載されました。
それがこちらです。
18年間の観察において、
フィナステリドの使用により、
前立腺癌と診断されるリスクは、
相対リスクで30%有意に低下していました。
これを悪性度の高い前立腺癌のみで検証すると、
フィナステリド群で17%その発症リスクは有意に増加していました。
ただ、前立腺癌の診断後の生存期間を比較すると、
フィナステリド群と偽薬群とで有意な差は認められませんでした。
今回のレターでは、
米疾病対策センター(CDC)の医療データを活用して、
同じ臨床試験参加者の生命予後を確認しています。
こちらをご覧下さい。
中央値で18.4年の観察期間において、
前立腺癌による死亡のリスクは、
有意差はないもののフィナステリド群で25%低下していて、
その悪性度にも明確な差は認められませんでした。
それを図示したものがこちらになります。
このように今回の長期間の検証において、
フィナステリドを使用することにより、
一定の前立腺癌の予防効果(30%程度)があり、
長期的に見てそれが前立腺癌による死亡リスクを、
有意差はないものの25%程度減少させていることが確認されました。
確かに悪性度の高い癌が見つかる率は高くなるのですが、
それは生命予後には影響を与えるものではありませんでした。
この結果をどのように考えるのかは、
難しいところですが、
前立腺癌の検診の有効性が揺らいでいる現在、
リスクの高い集団に対して、
予防的にフィナステリドを使用することも、
1つの方針として検討に値することは事実で、
今後そのコスト面を含めて、
検証の進捗を待ちたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療の予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2019年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載されたレターですが、
フィナステリドという前立腺における男性ホルモン作用の抑制剤の、
前立腺癌予防効果を検証したものです。
フィナステリド(プロペシア)は、
5α還元酵素Ⅱ型の阻害剤で、
組織における男性ホルモンの作用をブロックすることにより、
日本では現状脱毛症の治療薬として使用されています。
一方で欧米においては、
脱毛症より多い用量を用いて、
前立腺肥大症の治療薬として使用されています。
前立腺の組織は男性ホルモンの刺激により増殖するので、
フィナステリドは前立腺肥大を改善し、
前立腺を縮小する効果があります。
前立腺癌も男性ホルモン反応性であるので、
フィナステリドを継続使用することにより、
前立腺癌の予防効果があるのではないか、
という可能性が推測されます。
それを検証した臨床試験が行われ、
その結果が2003年のNew England…誌に掲載されました。
それがこちらです。
この55歳以上の18882名を登録して開始された、
大規模な臨床試験の結果によると、
7年間の経過観察でフィナステリドは、
前立腺癌の発症率を24.8%有意に低下させていました。
しかし、その一方でグリソンスコアで7点以上という、
悪性度の高い癌に関しては、
その比率がフィナステリド群で増加していました。
この試験はその後も経過観察が継続され、
トータルで18年間の観察結果をまとめた報告が、
2013年のNew England…誌に再度掲載されました。
それがこちらです。
18年間の観察において、
フィナステリドの使用により、
前立腺癌と診断されるリスクは、
相対リスクで30%有意に低下していました。
これを悪性度の高い前立腺癌のみで検証すると、
フィナステリド群で17%その発症リスクは有意に増加していました。
ただ、前立腺癌の診断後の生存期間を比較すると、
フィナステリド群と偽薬群とで有意な差は認められませんでした。
今回のレターでは、
米疾病対策センター(CDC)の医療データを活用して、
同じ臨床試験参加者の生命予後を確認しています。
こちらをご覧下さい。
中央値で18.4年の観察期間において、
前立腺癌による死亡のリスクは、
有意差はないもののフィナステリド群で25%低下していて、
その悪性度にも明確な差は認められませんでした。
それを図示したものがこちらになります。
このように今回の長期間の検証において、
フィナステリドを使用することにより、
一定の前立腺癌の予防効果(30%程度)があり、
長期的に見てそれが前立腺癌による死亡リスクを、
有意差はないものの25%程度減少させていることが確認されました。
確かに悪性度の高い癌が見つかる率は高くなるのですが、
それは生命予後には影響を与えるものではありませんでした。
この結果をどのように考えるのかは、
難しいところですが、
前立腺癌の検診の有効性が揺らいでいる現在、
リスクの高い集団に対して、
予防的にフィナステリドを使用することも、
1つの方針として検討に値することは事実で、
今後そのコスト面を含めて、
検証の進捗を待ちたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。