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血圧測定は手動より自動血圧計が優れている?(2019年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
自動血圧計の精度.jpg
2019年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
現状の自動血圧計を使用した血圧測定の精度を検証した論文です。

血圧は非常に重要な健康指標であることは間違いがありませんが、
その測定法についてはまだ多くの議論があり、
何が正しいのかという結論に至っていません。

正式な血圧測定の方法は、
現在でも腕を加圧して、
聴診器で医者や看護師が、
血管から生じる音を聴く聴診法ですが、
元々の機器自体が今は水銀の毒性の問題があって、
使用出来なくなっていますし、
実際にその音の実態が何であるのか、
という本質的な部分が実はよく分かっていません。

それに代わって、
今では多くの大学病院でも使用されているのが、
皆さんが自宅で測定に使用するような自動血圧計です。

ただ、これもその測定法には種類が多くあって統一はされておらず、
聴診法と一致させることを目標として、
あるアルゴリズムの元に測定値が算出されているものの、
その詳細はメーカーの企業秘密で公開されていないなど、
血圧測定のスタンダードとするには、
多くの問題を抱えています。

現状でも多くの臨床試験において、
外来での診察時の血圧値が活用されていますが、
患者さんの中には、
医者に行くだけで血圧が上がる、
というような人もいて、
必ずしも高血圧による患者さんのリスクを、
正確に反映していないという指摘があります。
測定者の手技やある種のクセによって、
数値が変動しやすいことも問題です。

一番その患者さんの状態を把握するのに有用な測定法は、
24時間の連続的な血圧測定ですが、
それを全ての高血圧の患者さんに行うことは、
現実的ではありません。

最近オシロメトリック法という、
血管の振動を感知して血圧を測定する方法を用いた、
自動血圧計が進歩を遂げ、
数回の連続測定を行ってそれを平均することにより、
通常より安定して正確に血圧を測定することが可能となりました。
この場合、患者さんを個室で1人にして、
静かな環境下で自分で測定を行ってもらいます。
そうすることにより、
医者の前で緊張して血圧が変動するような事態を、
回避することが可能となると考えられるのです。

日本で主にこの方式による血圧計を販売しているのはオムロンで、
今回の検証でもオムロン907という自動血圧計の臨床データが活用されています。

今回の研究ではこのオムロン907を利用したデータを含めて、
これまでの自動血圧計を用いた外来での血圧測定のデータを、
まとめて解析するシステマティックレビューとメタ解析という手法を用いて、
外来における医師や看護師の手動の血圧測定と、
環境を整えた上での自動血圧計の計測をと、
比較検証しています。

その結果、
24時間血圧測定の昼間の数値により近かったのは、
医師や看護師による手動の血圧測定より、
環境を整えた上で患者さん本人が施行した、
自動血圧計の測定値となっていました。

ただ、たとえばオムロンの測定の場合、
1分間隔で3回の測定を平均していて、
それを静かな個室で時間を掛けてやるのが前提ですから、
常に臨床で実行可能な方法とは言い難い面もあります。

これまで長いこと外来で血圧を測定し続けている立場としては、
「お前なんかの測定より機械の方が役に立つんだよ」
と言われることは切ない思いもあるのですが、
今後血圧測定はその方法の議論はともかくとして、
自動測定がスタンダードとなる流れは、
どうやら止められないものであるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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