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「ファースト・マン」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日なのでクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ファースト・マン.jpg
「セッション」「ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼル監督が、
今度はアポロ計画と最初の月着陸という、
アメリカの過去の夢の時代を、
徹底したドキュメンタリータッチで描いた作品が、
今ロードショー公開されています。

アポロ計画については「アポロ13」もありましたし、
宇宙旅行自体はさんざん映像化されているので、
何を今更という気がしないでもありません。
アポロ13号はミッション中にあわやという事故があって、
そこから生還したというドラマがありますが、
今回描かれたアポロ11号は最初の月面着陸という意義はあっても、
特にトラブルなく成功しているので、
あまり盛り上がるドラマにはならないのでは、
というようにも思えます。

ただ、物語はアポロ11号に至るまでの、
多くの犠牲者を出したアポロ計画の黎明期に、
むしろ主眼があり、
死屍累々という感じの計画の紆余曲折には、
事実だからこその凄みがあります。

その上で、主人公のニール・アームストロングが、
病気で幼い娘を失っているという逸話から、
1つの家族のドラマとして集束させています。

僕の大好きな「コンタクト」に似た味わいがありますし、
好みはありますが、個人的には好印象でした。

この作品は演出に特徴があり、
オリバー・ストーン監督に似たドキュメンタリータッチと、
目まぐるしい編集、
まるで実際に体験しているような主観的映像が、
巧みに構成されています。
単純に主観的映像というようなものではなく、
かなり複雑で高度な処理がされていると感じました。
宇宙の表現はリアル一辺倒ではなく、
「2001年宇宙の旅」がかなり意識的に引用されて、
彼方への希求という作品のテーマを表現しています。
しかも、通底音には叙情的な家族劇の水分があり、
所々に差し挟まれたロマンチックとも言える描写と、
抑制的で叙情的な音楽、
台詞や説明を最小まで絞った作劇も含めて、
1つの独自の世界を作り上げている点が、
さすがだと感じました。

社会的なテーマでもあり、
その要素も差し挟みながら、
物語自体はそうしたこととは無関係で、
別の次元のフィクションとして成立している点が、
個人的にはとても心地よく、
僕好みの映画でした。

端的に言えば、これは「死と家族」を描く映画で、
月とは死後の世界のことで、
そこで主人公は死んだ娘と出会い、
最後は生の世界に帰還しようとして、
ガラス1枚隔ててまだ戻れずに終わるのですが、
それを「コンタクト」のように幻想的に描くのではなく、
リアリズムで描いたところに趣があると思うのです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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