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スタチンの飲み忘れが生命予後に与える影響について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
スタチンの飲み忘れと生命予後.jpg
2019年のJAMA Cardiology誌に掲載された、
コレステロール降下剤を使用している患者さんの、
薬の飲み忘れが予後に与える影響についての論文です。

薬の有効性を評価する上で、
常に大きな問題となるのは薬の飲み忘れです。

特に脂質異常症の治療薬であるスタチンの場合、
長期の使用継続が必要である一方で、
飲み忘れがあっても、
特に身体の不調が起こるという訳ではありません。
血圧の薬であれば、
血圧が上昇することを確認出来るので、
飲み忘れは良くないと思うことが出来ますが、
スタチンの効果は血液の検査をしないと確認出来ませんから、
尚更飲み忘れが起こりやすいのです。

上記文献に引用されているデータによると、
スタチン治療を開始して1年後には、
患者さんは平均すると処方されている数の半分しかスタチンを飲んでおらず、
2年後には30%しか飲んでいませんでした。

スタチンの有効性は、
特に心筋梗塞などの心血管疾患に罹患した場合の、
二次予防(再発予防)に顕著です。

それではこうした場合に、
患者さんのスタチンの飲み忘れは、
どのような影響を及ぼすのでしょうか?

今回の研究では、
アメリカの退役軍人の臨床データを活用して、
心筋梗塞などの心血管疾患の二次予防目的で、
スタチンを継続使用しているトータル317104名を対象とし、
処方歴から治療期間における飲み忘れを計算し、
生命予後との関連を検証しています。
8割が白人種での検討です。

その結果、
9割以上の薬を忘れずに飲んでいる場合と比較して、
処方の遵守率が70から89%であると、
総死亡のリスクが1.08倍(95%CI: 1.06から1.09)、
遵守率が50から69%であると1.21倍(95%CI: 1.18から1.24)、
遵守率が50%未満であると1.30倍(95%CI: 1.27から1.34)、
それぞれ有意に増加していました。

つまり、
スタチンの飲み忘れが多いほど、
患者さんの生命予後に悪影響が生じる、
という結果です。

これはある意味では当たり前の結果ですが、
スタチンの二次予防の有効性を裏側から示すもので、
その飲み忘れという臨床上で極めて一般的な問題の、
実臨床に近い条件のデータとして、
非常に意義のあるものだと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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