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レビー小体型認知症とアルツハイマー型認知症の予後比較 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
レビーとアルツハイマーの予後比較.jpg
2019年のAgeing Research Reviews誌に掲載された、
認知症のタイプによる予後を比較した論文です。

認知症の中で最も多いのは、
国内外を問わずアルツハイマー型認知症ですが、
特徴的な幻視やパーキンソン症状などを特徴とし、
脳の組織においてレビー小体という特徴的な所見のある、
レビ-小体型認知症は、
アルツハイマー型認知症に次ぐ診断頻度を持っています。

このレビー小体型認知症の生命予後が、
アルツハイマー型認知症より悪いのではないか、
という見解は以前よりあり、
それを示唆する疫学データも発表されていますが、
否定的な結果も報告されていて、
一定の結論には至っていません。

レビー小体型認知症の確定診断は、
患者さんの死後に脳を解剖しないといけないので、
多数例のデータは得られにくいですし、
臨床症状からの診断も、
適切に行われれば一定の信頼性はあるものですが、
診断基準が変化しているなどの事情もあって、
複数のデータを比較しにくいという欠点があります。

今回のデータは、
これまでの主だった臨床データをまとめて解析することにより、
この問題の現時点での検証を行ったものです。

これまでの11の臨床研究の、
トータル22952名の認知症患者のデータをまとめて解析したところ、
そのうちの20923名はアルツハイマー型認知症で、
2029名はレビー小体型認知症でした。
これはレビー小体型認知症については、
臨床診断によるものです。

両者の予後を比較したところ、
その診断後アルツハイマー型認知症の患者は、
平均で5.66年(SD±5.32)で死亡したのに対して、
レビー小体型認知症では、
診断後平均で4.11年(SD±4.10)で死亡していました。
死亡リスクはアルツハイマー型認知症と比較して、
レビー小体型認知症では1.35倍(95%CI: 1.17から1.55)有意に増加していました。

前述のように、
レビー小体型認知症の診断はばらつきのあるものなので、
今回の結果のみでレビー小体型認知症の生命予後が、
アルツハイマー型認知症より低いと、
断じることは危険ですし、
これはあくまで過去の治療水準によるものですが、
仮に両者に差があるとすれば、
それは病態の差によるものなのか、
それとも環境要因や治療の差によるものなのか、
今後より詳細な検証を行うことにより、
両者の予後の改善に、
結び付くことを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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