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カルシウムのサプリメントによる心血管疾患リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
カルシウムのサプリメントと心血管疾患リスク.jpg
Diabetes Care誌に2024年2月付で掲載された、
カルシウムのサプリメントが、
糖尿病の患者さんに与える影響についての論文です。

カルシウムはサプリメントとして摂取される、
代表的なミネラルの1つで、
その使用は主に食事によるカルシウムの不足を補い、
骨粗鬆症の予防など骨の健康の維持にあると、
一般にはそう考えられています。

しかし、最近になってサプリメントでカルシウムを摂ることが、
心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化関連の病気のリスクを、
増加させるのではないかというデータが報告されて、
その安全性に疑問が投げかけられる事態となっています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3738985/

サプリメントでカルシウムを摂ることは、
通常の食事から摂る場合と比較して、
摂取後比較的急激に血液中のカルシウム濃度が上昇する可能性があり、
それが血管の石灰化などに繋がるのではないか、
という指摘もあります。

特に糖尿病の患者さんは、
動脈硬化進行のリスクが高く、
骨代謝の異常も指摘されていますから、
よりその影響を受けやすい可能性があるのです。

今回の研究はイギリスの有名な遺伝情報を含む大規模な医療データである、
UKバイオバンクのデータを活用して、
434374人の医療データを元に、
カルシウムのサプリメントの使用と心血管疾患リスクとの関連を、
糖尿病の有無によって比較検証しているものです。

その結果、
関連する因子を補正した結果として、
糖尿病の患者さんにおけるカルシウムサプリメントの使用は、
心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクを34%(95%CI:1.14から1.57)、
心血管疾患による死亡のリスクを67%(95%CI:1.19から2.33)、
総死亡のリスクを44%(95%CI:1.20から1.72)、
それぞれ有意に増加させていました。

その一方で糖尿病のない人では、
そうしたカルシウムサプリメントによる、
心血管疾患リスクの増加や生命予後の悪化は認められませんでした。

どうやら全ての人にカルシウムのサプリメントが有害であるのではなく、
糖尿病に代表されるような、
心血管疾患のリスクが高い人では、
そのリスクを増加させる可能性があるようです。

これはまだ現時点では確定的な知見ではありませんが、
カルシウムのサプリメントの意義が低下し、
そのリスクの可能性が高くなってきていることは事実で、
特に心血管疾患のリスクが高いような人は、
カルシウムは食事から充分摂取して、
サプリメントは使用しない方が安全であるとは言えそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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