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植物性タンパク質の摂取と健康寿命との関連 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
植物性蛋白摂取と健康.jpg
the American Journal of Clinical Nutrition誌に、
2024年1月17日付で掲載された、
タンパク質の摂取量と健康との関係についての論文です。

高齢になると、
筋肉が萎縮して細くなり、
筋力が低下して転倒などのリスクが高まります。
これをサルコペニアと呼んでいます。

タンパク質を多く摂ることで、
その予防に繋がり、
健康寿命が延びることを示唆するデータがあり、
良質のタンパク質を積極的に摂ることが、
高齢者において推奨されています。

ただ、たとえば牛肉のような赤身肉を多く摂ることは、
生活習慣病の増加に繋がることを示唆する報告もあります。
乳製品の摂取も議論のあるところです。

つまり、単純にタンパク質を多く摂れば良いのではなく、
その組成に配慮する必要がある訳です。

また、高齢者がタンパク質を多く摂っても、
それがそのまま筋肉になる訳ではありません。
高齢になればタンパク質を造る力や利用する力もまた、
低下することが想定されるからです。

その意味ではもう少し前の年代、
たとえば60歳未満くらいの時期にタンパク質を多く摂ること、
それも赤身肉のような動物性タンパク質に偏らない、
バランスの取れた摂取を行うことが、
その後の健康状態に、
最も有効に働くと想定されます。

しかし、実際にはそうした観点から、
タンパク質の摂取の与える影響を検証した疫学データは、
これまであまり存在していませんでした。

そこで今回の研究では、
アメリカで女性看護師を対象とした、
有名な大規模疫学研究のデータを活用して、
60歳未満の時期におけるタンパク質の摂取量が、
その後の健康長寿に与える影響を、
タンパク質の組成を含めて比較検証しています。

1984年の登録時に60歳未満で、
糖尿病や癌、心筋梗塞などの慢性の病気の既往がない、
トータル48762名の女性を対象として、
その後2016年までの長期の健康観察を施行。
2016年の時点でも癌、糖尿病などの持病がなく、
生活を介助なく送れて、
認知症や精神疾患もない状態を健康な老化と定義しています。

タンパク質は魚や肉などの動物性タンパク質と、
豆類や野菜、穀類など由来の植物性タンパク質、
そして牛乳やチーズなどの乳製品に分けて検証しています。

その結果、
タンパク質の摂取量が多いほど、
健康な老化を獲得する可能性が高まっていました。
具体的にはカロリーの3%、
摂取する総タンパク量が増加すると、
健康な老化の確率は5%(95%CI:1.01から1.10)、
それが動物性タンパク質の場合は7%(95%CI:1.02から1.11)、
乳製品のタンパク質の場合は14%(95%CI:1.06から1.23)、
植物性タンパク質の場合は38%(95%CI:1.24から1.54)、
それぞれ有意に高くなっていました。

つまり、中年期にタンパク質、特に植物性タンパク質を多く摂ることが、
その後の健康長寿に大きな影響を与える、
という結果です。

寝たきりにも認知症にもなりたくないなら、
植物性タンパク質を多く摂る食生活を継続することが、
科学的には最も効率的な予防法、
という言い方が出来そうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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