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た組「綿子はもつれる」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
綿子はもつれる.jpg
今個人的には一番注目している、
新進気鋭の劇作家加藤拓也さんの新作が、
劇団た組の公演として、
安達祐実さんをフィーチャーして上演されています。

このコンビの前作「もはやしずか」が衝撃的であったので、
今回もとても期待をして足を運びました。

「もはやしずか」と同じように、
今回も安達祐実さんと平原テツさんが夫婦を演じます。
前回はその下の世代として黒木華さんが登場して、
とても豪華な女優のツートップ体制だったのですが、
2人の息子として田村健太郎さんなどが登場しますが、
今回は明確に安達さんメインの物語になっています。

今回も素晴らしく刺激的な作品でした。

「もはやしずか」もイプセンを強く感じましたが、
今回ももろにイプセンという感じです。

平原さん演じる離婚歴があり前妻の息子を養育している男性が、
安達さんと再婚するのですが、
夫の浮気が明らかになり、
それから夫婦仲は冷え切って、
安達さんの方も不図したきっかけで別の男性と、
不倫の関係を始めるようになります。
その破綻した夫婦と息子との3人の家庭が、
ほぼ崩壊した状態でありながら継続しているのですが、
安達さんの不倫相手が、
その眼前で事故死してしまうので、
そのショックが家族の関係に、
絶対話せない秘密という要素を加え、
物語は混沌とした様相を帯びるのです。

破綻していながら、
生活を「家族」として続けないといけない、
という複雑で微妙な関係性を描いた作品で、
加藤作品を知り尽くした平原さんと、
演技の没入感では現在追随を許さない感のある安達さんの、
演技の競演が、
演劇ファンにとっては最高のご馳走です。

カーテンで斜めに仕切られた舞台が、
2つの時間と空間を絶妙に切り取って鮮やかですし、
複層的に流れる時間の処理もさすがです。

クライマックスでは安達さんが、
平原さんの前で延々と泣き続けるのですが、
泣くだけの表現がクライマックスとして成立するのは、
安達さんならではの至藝でした。
これだけで充分鑑賞の値打ちがあります。

ただ、今回ちょっと不満であったのは、
1つは田村健太郎さんが高校生の息子を演じたことで、
さすがにこれは外見的に無理がありました。
また「もはやしずか」でも問題となったラストの処理ですが、
抜け殻となった自分と過去の自分がすれ違う、
というようなかなり複雑なことをしているのですが、
あまり成功しているとは言い難く、
オープニングと同じ場面を繰り返すのも、
あまり良いとは思えませんでした。

この辺りが加藤さんの劇作の現時点での問題点で、
衝撃的かつ明快なラストが生まれた時に、
真の意味でイプセンに匹敵する家庭劇の名作が、
誕生するような気がします。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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