ウーマンリブvol.15「もうがまんできない」 [演劇]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
2022年に上演予定でコロナのために配信のみとなった、
宮藤官九郎さんの新作が、
今下北沢の本多劇場で本日まで上演されています。
(画像は2022年時のチラシのものです)
これはちょっと岩松了さんに寄せた作風の、
複合的な苦い人間ドラマで、
クドカンとしては比較的分かり易く、
それほどの癖のない作品に仕上がっていたと思います。
クドカンの作品の全てを観ている訳ではありませんが、
3分の2以上は生で観ている経験の範囲で、
代表作の1つと言って過言ではないと思います。
発達障害の少女と、
その少女にデリヘルをさせている父親の歪んだ愛情の話、
10年以上売れず、解散を考えているお笑いコンビの話、
ITの経営者の妻が会社の部下と、
そうと知らずに不倫をしている話、
の3つの物語が、
渋谷の裏町に建つ雑居ビルの屋上と、
それに向かい合うタワーマンションのベランダを舞台に、
複合的に展開されます。
クドカンの作品としては緻密に計算された人間ドラマで、
特に発達障害の娘とその父親の話は、
かつて松尾スズキさんが得意としたテーマでしたが、
最近はコンプライアンス的問題があって、
松尾さん自身もそうした作品を書いていませんし、
クドカンとしても、
舞台より多くの人の目に触れる、
映像のドラマでは描き難いテーマではないかと思います。
今回は少女役に独特の個性を持つ新人を起用して、
その生々しさがよりリアルなものになっています。
演出も途中で挿入されるミュージカル風の幻想シーンが楽しく、
ラスト少女に殺人をさせようとする父親の企みを、
離れたベランダから阿部サダヲさん演じる間男が、
阻止しようと声を掛けるところに、
売れない漫才コンビの舞台を重ねるという、
重層的な構成が鮮やかで印象的でした。
ラストは本当に凄い場面になっていたと思います。
岩松了的なショックがあって、
でもそれがクドカンの世界として昇華されていました。
その前に久しぶりに怪優ぶりをいかんなく発揮していた平岩紙さんが、
スパイダーマンみたいに壁を這って、
セレブの世界から転落したと見せて、
図太く這い上がる場面があって、
それが伏線になっている点も凄いと思いました。
売れないお笑いコンビの話は、
以前にもウーマンリブの舞台で上演されたことがありましたが、
稽古をしている劇場のある雑居ビルの屋上に、
場面を限定した工夫や、
セレブのタワマンのベランダを向かい合わせて、
その格差を視覚的に見せ、
両者を梯子で結んでリスクのある綱渡りを見せたりする工夫で、
よりエッジの効いた物語に仕上がっていました。
個性豊かな役者の競演が楽しく、
クドカンの拘りが、
細部まで感じられる力作に仕上がっていたと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
2022年に上演予定でコロナのために配信のみとなった、
宮藤官九郎さんの新作が、
今下北沢の本多劇場で本日まで上演されています。
(画像は2022年時のチラシのものです)
これはちょっと岩松了さんに寄せた作風の、
複合的な苦い人間ドラマで、
クドカンとしては比較的分かり易く、
それほどの癖のない作品に仕上がっていたと思います。
クドカンの作品の全てを観ている訳ではありませんが、
3分の2以上は生で観ている経験の範囲で、
代表作の1つと言って過言ではないと思います。
発達障害の少女と、
その少女にデリヘルをさせている父親の歪んだ愛情の話、
10年以上売れず、解散を考えているお笑いコンビの話、
ITの経営者の妻が会社の部下と、
そうと知らずに不倫をしている話、
の3つの物語が、
渋谷の裏町に建つ雑居ビルの屋上と、
それに向かい合うタワーマンションのベランダを舞台に、
複合的に展開されます。
クドカンの作品としては緻密に計算された人間ドラマで、
特に発達障害の娘とその父親の話は、
かつて松尾スズキさんが得意としたテーマでしたが、
最近はコンプライアンス的問題があって、
松尾さん自身もそうした作品を書いていませんし、
クドカンとしても、
舞台より多くの人の目に触れる、
映像のドラマでは描き難いテーマではないかと思います。
今回は少女役に独特の個性を持つ新人を起用して、
その生々しさがよりリアルなものになっています。
演出も途中で挿入されるミュージカル風の幻想シーンが楽しく、
ラスト少女に殺人をさせようとする父親の企みを、
離れたベランダから阿部サダヲさん演じる間男が、
阻止しようと声を掛けるところに、
売れない漫才コンビの舞台を重ねるという、
重層的な構成が鮮やかで印象的でした。
ラストは本当に凄い場面になっていたと思います。
岩松了的なショックがあって、
でもそれがクドカンの世界として昇華されていました。
その前に久しぶりに怪優ぶりをいかんなく発揮していた平岩紙さんが、
スパイダーマンみたいに壁を這って、
セレブの世界から転落したと見せて、
図太く這い上がる場面があって、
それが伏線になっている点も凄いと思いました。
売れないお笑いコンビの話は、
以前にもウーマンリブの舞台で上演されたことがありましたが、
稽古をしている劇場のある雑居ビルの屋上に、
場面を限定した工夫や、
セレブのタワマンのベランダを向かい合わせて、
その格差を視覚的に見せ、
両者を梯子で結んでリスクのある綱渡りを見せたりする工夫で、
よりエッジの効いた物語に仕上がっていました。
個性豊かな役者の競演が楽しく、
クドカンの拘りが、
細部まで感じられる力作に仕上がっていたと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2023-05-14 09:55
nice!(3)
コメント(1)
ドラマ「俺の家の話」でも発達障害の子どもを描いていましたが、
宮藤官九郎さんは、よほど「どですかでん」の六ちゃんが心に残ったんでしょうね。
by いっぷく (2023-05-15 01:02)