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歩きながら考えることと認知機能との関連 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日なので、
クリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
話しながらの歩行と認知機能.jpg
the Lancet Healthy Longevity誌に、
2023年3月付で掲載された、
物を考えながら歩くことと、
認知機能低下との関連についての論文です。

デュアルタスク(二重課題)というのは、
同時に2つの課題を実施することで、
典型的なものは、
「歩きながら話をする」というような、
ながら歩きです。

これは歩くという行動を実施しながら、
脳の別の部分を動かして会話をしている訳で、
ただ歩くだけよりも、
脳はより高度の作業をしているのです。

認知機能は加齢に伴い誰でも低下しますが、
こうしたデュアルタスクの機能は、
より早期から低下すると考えられています。

この機能が低下すると、
歩くだけなら普通の速度で安定して歩けるのに、
話しながら歩こうとすると、
歩く速度が不安定で遅くなったり、
停まってしまったりします。

これまでの研究で、
話しながら歩けない人は、
その後転倒するリスクが高かったり、
認知機能が低下するリスクが高い、
ということが分かっています。

ただ、そうしたデータは主に65歳以上を対象としたもので、
それより若い年齢でもそうしたことが言えるのかについては、
あまり明確なことが分かっていませんでした。

今回の研究はスペインにおいて、
脳の健康について調査した疫学データを二次解析したものですが、
40から64歳の年齢において、
歩きながら簡単な引き算をしてもらうデュアルタスクを施行して、
通常の歩行との比較を行っています。

その結果54歳を超えると、
徐々にデュアルタスクによる歩行の不安定さが増加し、
それが認知機能低下とも相関していることが確認されました。

このように、
一般に54歳を超えるとデュアルタスクの機能は低下し、
それが認知機能低下の極初期の兆候として、
有用な可能性が示唆されました。

くれぐれも危険のない場所で行う必要がありますが、
歩きながら別の作業が出来るかどうかを、
定期的にチェックすることは、
認知機能の低下の初期のスクリーニングとして、
重要であることは間違いがなさそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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