「逆転のトライアングル」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
スウェーデンの鬼才リューベン・オストルンド監督の新作で、
2022年のカンヌ国際映画祭のパルムドールに輝いた作品ですが、
かなり悪趣味な部分もある怪作で、
個人的には嫌いではありませんが、
大絶賛とも言い難く、
観る人をかなり選ぶ感じの作品になっています。
まあでも最近のカンヌのパルムドールというのは、
大抵そんな感じですよね。
並べて続けて最近の受賞作を観たら、
頭がおかしくなって、
映画が嫌いになってしまいそうです。
昔のブニュエルをもう少し今風にドギツクしたような作風で、
グロテスクで下品であるにも関わらず、
マルクス主義と共産主義のディスカッションがあるなど、
ヨーロッパ的な理屈っぽさも全開です。
オープニングからレストランの支払いを、
男と女どちらが払うかという議論になり、
そこから既に資本論的色彩が濃厚に漂います。
ベースにあるのはヨーロッパの白人種が強く持つ、
「有色人種(特にアジア人種)に支配されてしまうのではないか」という不安で、
実際に世界はそうした方向に進みつつあり、
半分くらいはそうなっている訳ですが、
この映画の3部構成は、
1部がルッキズムに支配された白人社会の豊饒と腐敗を、
2部の豪華クルーズ船で白人社会の崩壊を描き、
3部の漂流した無人島(?)で有色人種に支配された、
「悪夢」の世界を描くという構成になっています。
構成は緻密で知的で複雑ですが、
その表現はかなり露悪的でグロテスクなもので、
典型的なのは嵐で揺れ動く船内で、
豪華ディナーを食べ、次々と盛大に嘔吐する富裕層の描写です。
お世辞にも品のある描写ではありませんが、
先日の「バビロン」にも同様の場面があったことを考えると、
インテリ映画人の1つの流行であるのかも知れません。
昔のヨーロッパ映画を観ているような気分で、
まずまず楽しく鑑賞出来ました。
ただ、この映画は特定の観客と共有する性質のもので、
僕が日本でこの作品を観ても、
そこに共有する部分はほぼないので、
「まずまず面白い」という以上の感想を、
持つことは出来ませんでした。
でも、それで良いような気がします。
最後にこの映画の宣伝についてですが、
題名は意図的な誤訳で、
「豪華客船が無人島に漂着。そこで頂点に君臨したのは、サバイバル能力抜群な、船のトイレ清掃婦だった」
という宣伝文句も、
明らかな嘘がある上に、
漂着するのは物語の後半であるのに、
その展開をネタバレしている点など、
かなり疑問に感じました。
昔はこうした出鱈目な宣伝は映画のお約束でしたが、
最近はあまりなかったように思うので、
一体誰がやったのかしらと、
少し興味をそそられました。
こういうのは、あまり良くないですよね。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
スウェーデンの鬼才リューベン・オストルンド監督の新作で、
2022年のカンヌ国際映画祭のパルムドールに輝いた作品ですが、
かなり悪趣味な部分もある怪作で、
個人的には嫌いではありませんが、
大絶賛とも言い難く、
観る人をかなり選ぶ感じの作品になっています。
まあでも最近のカンヌのパルムドールというのは、
大抵そんな感じですよね。
並べて続けて最近の受賞作を観たら、
頭がおかしくなって、
映画が嫌いになってしまいそうです。
昔のブニュエルをもう少し今風にドギツクしたような作風で、
グロテスクで下品であるにも関わらず、
マルクス主義と共産主義のディスカッションがあるなど、
ヨーロッパ的な理屈っぽさも全開です。
オープニングからレストランの支払いを、
男と女どちらが払うかという議論になり、
そこから既に資本論的色彩が濃厚に漂います。
ベースにあるのはヨーロッパの白人種が強く持つ、
「有色人種(特にアジア人種)に支配されてしまうのではないか」という不安で、
実際に世界はそうした方向に進みつつあり、
半分くらいはそうなっている訳ですが、
この映画の3部構成は、
1部がルッキズムに支配された白人社会の豊饒と腐敗を、
2部の豪華クルーズ船で白人社会の崩壊を描き、
3部の漂流した無人島(?)で有色人種に支配された、
「悪夢」の世界を描くという構成になっています。
構成は緻密で知的で複雑ですが、
その表現はかなり露悪的でグロテスクなもので、
典型的なのは嵐で揺れ動く船内で、
豪華ディナーを食べ、次々と盛大に嘔吐する富裕層の描写です。
お世辞にも品のある描写ではありませんが、
先日の「バビロン」にも同様の場面があったことを考えると、
インテリ映画人の1つの流行であるのかも知れません。
昔のヨーロッパ映画を観ているような気分で、
まずまず楽しく鑑賞出来ました。
ただ、この映画は特定の観客と共有する性質のもので、
僕が日本でこの作品を観ても、
そこに共有する部分はほぼないので、
「まずまず面白い」という以上の感想を、
持つことは出来ませんでした。
でも、それで良いような気がします。
最後にこの映画の宣伝についてですが、
題名は意図的な誤訳で、
「豪華客船が無人島に漂着。そこで頂点に君臨したのは、サバイバル能力抜群な、船のトイレ清掃婦だった」
という宣伝文句も、
明らかな嘘がある上に、
漂着するのは物語の後半であるのに、
その展開をネタバレしている点など、
かなり疑問に感じました。
昔はこうした出鱈目な宣伝は映画のお約束でしたが、
最近はあまりなかったように思うので、
一体誰がやったのかしらと、
少し興味をそそられました。
こういうのは、あまり良くないですよね。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2023-04-22 09:29
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