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大腸ファイバーはどのくらいの間隔で施行するべきか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
大腸ファイバーはどのくらいの間隔で施行するのが良いのか?.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2023年1月17日ウェブ掲載された、
大腸ファイバーの検査で異常が見られなかった場合、
次の検査はどのくらいの間隔で受けるべきなのかを、
検証した論文です。

50歳以上の年齢において大腸の内視鏡検査を施行することは、
大腸癌の早期発見のためのスクリーニングとして有効性が高く、
50歳で1回の内視鏡検査を施行することで、
その後の大腸進行癌のリスクや、
大腸癌により死亡するリスクを低下させることが、
多くの精度の高い臨床データにより実証されています。

もし、その検査において、
経過観察の必要な前癌病変やポリープなどが認められれば、
その必要性に応じて、
検査は繰り返されることになります。

ただ、ここで1つの問題は、
癌検診としての初回の大腸内視鏡検査において、
特に異常が認められなかった場合、
次の検査はそのくらいの間隔を空けて施行するのが、
最も有効性が高いのか、
という点にあります。

これは日本では、
概ね「5年はやらなくて大丈夫ですよ」
と言われるケースが多いと思います。
一方でアメリカを初め多くの海外のガイドラインにおいては、
10年は間隔を空けて良い、
と記載をされていることが多いのです。
その1つの根拠となっているのは、
2019年に発表されたメタ解析の論文で、
そこでは一度大腸内視鏡検査で異常がなかった場合、
その後10年以内に進行癌が発見される可能性は、
非常に低い、という知見が得られています。

しかし、このメタ解析で対象となっているデータは、
個々にはそれほど対象者が多くなく、
単独の臨床データにおいて、
再検証される必要性が指摘されていました。

また10年空けることで問題ないとすれば、
15年空けるとどうなのか、
それほど違いはないのか、
それとも癌のリスクは明確に増加するのか、
というような点についても、
正確なことは分かっていません。

今回の研究は男性50歳、女性55歳以降で、
大腸癌スクリーニングとしての大腸内視鏡検査を施行しているドイツにおいて、
スクリーニング後の長期経過を観察し、
この問題の検証を行っているものです。

スクリーニングの大腸内視鏡検査を施行した、
トータル120298名の経過を観察したところ、
初回の検査でポリープなどの所見がなかった場合、
10年後に施行された大腸内視鏡検査での、
大腸癌と粘膜内癌(advanced adenoma)を併せた罹患率は、
女性で3.6%、男性で5.2%でした。
これが初回検査から14年以上経過して施行された場合、
罹患率は女性4.9%、男性で6.6%に増加しています。
ただ、期間に関わらず、施行された全ての大腸内視鏡検査における罹患率は、
女性7.1%、男性11.6%ですから、
14年を超えた検査においても、
その罹患率は抑制されていることが分かります。

癌発見のリスクは女性より男性で高く、
年齢が75歳以上で増加しているので、
初回の検査で異常のない場合の、
75歳未満の女性における大腸癌発見のリスクは非常に低く、
10年を超える間隔を空けても、
問題はないと考えられました。

日本においては、
頻度が低くても癌を見落とすべきではない、
という考え方が強く、
一般の方も頻回の検査を希望される傾向が強いので、
所見がなくても5年に一度の検査が施行されることが多いのですが、
コスト意識を重視する欧米では、
むしろ大腸内視鏡検査のスクリーニング間隔は、
より長くするべきだという議論があり、
この論文においても、
条件によっては10年以上の検査間隔が望ましいのではないか、
という結論になっています。

これはどちらが正しいと単純には言えませんが、
癌のスクリーニングのあり方には、
国内外でかなりの考え方の違いのあることは、
個々に確認しておく必要があると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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