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ω3系脂肪酸と慢性腎臓病リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ω3系脂肪酸と慢性腎臓病リスク.jpg
British Medical Journal誌に、
2023年1月18日ウェブ掲載された、
魚や植物油に含まれるω3系脂肪酸と呼ばれる油の、
腎臓病予防効果についての論文です。

動物性の油よりも、
植物性の油の方が健康に良い、
というのはしばしば言われて来たことです。

飽和脂肪酸よりも不飽和脂肪酸が健康に良い、
というような言い方も、
しばしばされてきました。

テレビなどの健康情報では、
サバやサンマに含まれる脂肪酸が、
ダイエットに良いという話題も盛んに取り上げられています。

脂肪酸というのは、身体の中の油の総称で、
タンパク質のように窒素は含まず、
炭素と水素、酸素だけからなる、
シンプルな構造物です。
リン脂質や糖脂質、コレステロールやステロイドのような、
脂肪酸から由来する物質も多く、
この中には窒素を含むものもあります。

その大元である脂肪酸は、
二重結合のない飽和脂肪酸と、
二重結合のある不飽和脂肪酸に分かれます。

原子は他と繋がる手を、
決まった数だけ持っていて、
その手がそれぞれ別のものと繋がっているのが、
飽和で、2つの手が同じものと繋がっているのが、
不飽和ということになります。

分子量の大きい「不飽和脂肪酸」は、
その二重結合の位置が端から3番目のものと、
6番目のものとに分かれます。
3番目のものをn-3脂肪酸とか、ω-3系多価不飽和脂肪酸、
などと呼び、
EPAやDHA、α-リノレン酸などはその代表です。
一方で6番目のものの代表は、
リノール酸やアラキドン酸で、
これをおなじように、
n-6脂肪酸やω-6系多価不飽和脂肪酸、
などと呼んでいます。

動物性の脂肪の多くは、
飽和脂肪酸です。
ラードやバターなどはその代表です。

魚や植物油を多く摂るような生活習慣により、
心血管疾患のリスクが減少する、
というような疫学データは多くあり、
その原因として注目されているのがω3系脂肪酸です。

これは具体的には、
主にサバやサンマなどの青身魚の脂に含まれる、
EPA(エイコサペンタエン酸)、DPA(ドコサペンタエン酸)、
DHA(ドコサヘキサエン酸)、
そしてエゴマやアブラナ、ダイズなどの油に含まれる、
植物性油脂のαリノレン酸です。

これまでの臨床研究により、
ω3系脂肪酸を多く摂取することにより、
心血管疾患のリスク低下や中性脂肪の低下などの健康効果が、
データによりその程度には違いはあるものの、
ほぼ確認をされています。

ただ、慢性腎臓病単独での予防効果については、
信頼のおけるデータは多くないのが実際です。

そこで今回の研究では、
これまでに施行された世界12か国の19の臨床データを、
まとめて解析する手法で、
ω3系脂肪酸の慢性腎臓病予防効果を検証しています。
摂取量の聞き取りのデータではなく、
ω3系脂肪酸の個々の血液濃度で検証しているところがポイントです。

トータルで25570名を中間値で11.3年観察したデータを解析したところ、
5分割した魚由来のω3系脂肪酸(EPA。DPA、DHA)の血液濃度が、
最も低い群と比較して、最も高い群では、
慢性腎臓病の発症リスクが13%(95%CI:0.80から0.96)有意に低下していました。
一方で植物由来の油に含まれるαリノレン酸濃度と慢性腎臓病リスクとの間には、
有意な関連は認められませんでした。

2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
ω3系脂肪酸の血液濃度と健康長寿との関連の解析データでも、
矢張り有効性はDHAとEPA、DPAのみで確認されていて、
どうやら同じω3系脂肪酸でも、
EPAやDHA、DPAとαリノレン酸は、
別のものとして考えた方が良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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