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新型コロナの抗原検査の精度とタイミング [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
COVID-19の抗原検査とPCRの比較.jpg
Annals of Internal Medicine誌に、
2022年10月11日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスの抗原検査の精度についての論文です。

新型コロナとインフルエンザの同時流行以降、
発熱の患者さんでは抗原検査を優先して、
施行することが多くなりました。

インフルエンザは抗原検査しか施行出来ず、
新型コロナとの同時検出のキットが普及しているので、
それが一番効率的であるからです。

ただ、問題は新型コロナの抗原が陰性であった場合の判断で、
RT-PCR検査を追加で施行するべきか、
感染の可能性は低いとして経過観察とするべきか、
事例ごとに迷うところです。

抗原検査の陽性率については色々な見解があります。
症状出現から、
概ね48時間以内に陽性となることについては、
ほぼ確実と考えて良いのですが、
少数ですが、RT-PCR検査は持続的に陽性なのに、
抗原検査は何度施行しても陰性、
ということがあります。
また、施行のタイミングによって、
抗原検査のみ陰性となることも、
こちらはしばしばあります。
デルタ株やオミクロン株の流行期には、
変異株により陽性率に違いがあるのでは、
というような意見もありました。

今回の検証はアメリカにおいて施行された、
新型コロナの疫学研究のデータを二次利用して、
鼻腔の抗原検査とRT-PCR検査を同時施行し、
RT-PCR検査を「正解」として、
その時期における抗原検査の感度を比較しているものです。

もともとの対象者は7349名で、
RT-PCR検査を一方の鼻腔で、
新型コロナの抗原検査をもう一方の鼻腔で、
同時に施行して、その結果を比較します。
そして、それを48時間ごとに繰り返すのです。
検体を採取するのは対象者自身で自宅で行い、
抗原検査は自分でキットを使用して判定し、
RT-PCR検査は検体を検査機関に送って検査を行います。

その結果1回以上RT-PCR検査で陽性が確認されたのは、
施行期間中207名で、
内訳はデルタ株が58例でオミクロン株が149例です。

ここで、初回の遺伝子検査が陽性であった事例における、
抗原検査の感度は、
同日の検査では、
デルタ株で15.5%(95%CI:6.2から24.8)、
オミクロン株で22.1%(95%CI:15.5 から28.8)、
という低率でした。
それが、初回検査から48時間後に施行した抗原検査の感度は、
デルタ株で44.8%(95%CI:32.0から57.6)、
オミクロン株で49.7%(95%CI:41.6から57.6)まで上昇しています。

これを初回検査でも48時間後の検査でも、
続けて遺伝子検査陽性の109例のみで解析すると、
抗原検査の48時間以内の感度は、
デルタ株で81.5%(95%CI:66.8から96.1)、
オミクロン株で78.0%(95%CI:69.1から87.0)と、
通常多くの方が想定される、
抗原検査の感度と一致していました。

このように、
抗原検査は遺伝子検査が初めて陽性となるようなタイミングでは、
半数以上の事例で陽性とはならず、
診断の役には立たないのですが、
その48時間後にはかなりの事例で陽性になります。
オミクロン株では抗原は陽性になりにくい、
というような意見もありましたが、
今回のデータでは、
そうした傾向はないようです。
遺伝子検査が陽性となる期間は、
事例によって異なっていて、
48時間以上陽性が持続するようなケースでは、
その期間の抗原検査の陽性率も高いのですが、
短期間しか遺伝子検査が陽性にならないような事例もあり、
そうした事例における抗原検査の陽性率も低いようです。

このように抗原検査は簡便で、
一定の有効性のある診断法ですが、
その感度は事例の性質や検査のタイミングによって、
大きく変化する性質のものなので、
単独の検査のみで安易に診断を決定することなく、
事例によっては両者の検査を使い分けて、
臨床症状や流行状況との関連も考えつつ、
慎重に個別の診断を行うことが肝要だと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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