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SGLT2阻害剤の慢性腎臓病進行予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
エンパグリフロジンと慢性腎臓病.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2023年1月12日掲載された、
糖尿病の治療薬であるSGLT2阻害剤の、
腎臓病に対する進行予防効果を検証した論文です。

SGLT2阻害剤は、
尿へのブドウ糖の排泄を増加させることにより、
糖尿病のコントロールを改善する作用を持つ薬剤ですが、
心血管疾患のリスクを低下させる作用のあることが確認され、
慢性心不全の患者さんへの治療薬としても、
糖尿病の有無に関わらず使用されるなど、
その使用適応が拡大されて注目を集めています。

糖尿病と合併した慢性腎臓病の患者さんにおいても、
その進行予防や予後の改善において、
SGLT2阻害剤が有効であることが確認されています。

ただ、糖尿病のない慢性腎臓病の患者さんにおいても、
同様の有効性があるかどうかについては、
まだデータが限られているのが実際です。

これまでにも、メタ解析の論文は発表されていますが、
単独の臨床研究でその点が検証されたことはあまりありませんでした。

今回の研究は世界8か国の241の専門施設において、
腎機能の基準である推計糸球体濾過量(eGFR)という数値が、
20以上45mL/min/1.73㎡未満であるか、
45mL/min/1.73㎡以上90未満で、
尿中アルブミンがクレアチニンのグラム換算で200㎎以上の、
タンパク尿が認められるという、
幅広い範囲の慢性腎臓病の患者、
トータル6609名をくじ引きで2つの群に分けると、
一方はSGLT2阻害剤のエンパグリフロジン(商品名ジャディアンスなど)を、
1日10㎎使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
中間値で2.0年の経過観察を施行しています。

その結果、
末期腎不全への進展や、登録時から40%以上のeGFRの低下、
腎臓病による死亡と心血管疾患による死亡を併せたリスクは、
偽薬と比較してエンパグリフロジンの使用により、
28%(95%CI:0.64から0.82)有意に低下していました。
この結果は、糖尿病のあるなしに関わらず、
また登録時の腎機能のレベルに関わらす認められていました。
ただ、個別の解析では総死亡のリスクや、
心血管疾患による入院は死亡のリスクについては、
明確な差は認められませんでした。

このように、
今回の厳密で大規模な解析においても、
SGLT2阻害剤による腎臓病進行予防効果は確認されていて、
今後この薬は糖尿病、心不全に続いて、
慢性腎臓病に対しても、
治療の基礎薬として使用される流れになりそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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