SSブログ

新型コロナウイルス後遺症の1年後の経過(軽症事例におけるイスラエルのデータ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナ後遺症の1年後経過.jpg
British Medical Journal誌に、
2023年1月11日ウェブ掲載された、
新型コロナ後遺症の1年後の経過を検証した、
イスラエルの疫学データです。

COVID-19後遺症については、
これまでも何度も記事にしています。

新型コロナウイルス感染症の罹患後に、
体調不良が長期間持続することは以前より指摘されていて、
その呼び名も定義も、
必ずしも統一されていませんが、
概ね感染に罹患後3か月以上持続する症状で、
それにより日常生活や仕事などの社会生活に、
一定の制限が必要となったり困難が生じる場合に、
COVID-19後遺症や新型コロナ後遺症、
COVID-19罹患後症候群やロングCOVID、
などの名称が使用されています。
ちなみに今回の論文ではロングCOVIDという表記が使われています。

その症状も数多く報告されていますが、
報告の多いものでは大きく3つに分かれるというのが、
今の一般的な考え方です。
その3つというのは、
①咳や痰がらみ、息切れなどの呼吸器症状
②感情の変化や身体の痛みなどを伴う、全身の倦怠感
③物忘れや集中力低下などの認知機能障害
の3種類です。
他に味覚嗅覚障害がありますが、
これは持続することはあるものの、
他のCOVID-19後遺症とは別に考えることが通常です。

COVID-19後遺症の臨床像は、
このように明らかになりつつあると言えるのですが、
その長期予後については、
まだまだデータが少ないのが実際です。

今回の疫学データはイスラエルのもので、
特徴としてはRT-PCR検査で診断された事例のみを扱い、
入院を要さず回復した軽症の事例において、
COVID-19発症後1年までの時点での、
COVID-19後遺症の症状持続の有無を検証しているものです。

COVID-19後遺症の個々の症状について、
短期(発症30から180日)と長期(発症180から360日)
に分けて検証したところ、
味覚嗅覚障害は早期で非感染の4.59倍(95%CI:3.63から5.80)
人口1万人当たり19.6人(95%I:16.9から22.4)増加していましたが、
6か月以降の長期では、
非感染の2.96倍(95%CI:2.29から3.82)、
人口1万人当たり11.0人(95%CI:8.5から13.6)と短期と比較して改善していました。

認知機能低下の症状については、
短期で非感染の1.85倍(95%CI:1.58から2.17)、
人口1万人当たり12.8人(95%CI:9.6から16.1)の増加が見られ、
長期では非感染の1.69倍(95%CI:1.45から1.96)、
人口1万人当たり13.3人(95%CI:9.4から17.3)と大きな変化は認められませんでした。

呼吸困難の症状については、
短期で非感染の1.79倍(95%CI:1.68から1.90)、
人口1万人当たり85.7人(95%CI:76.9から94.5)の増加が見られ、
長期では非感染の1.30倍(95%CI:1.22から1.38)、
人口1万人当たり35.4人(95%CI:26.3から44.6)まで改善が認められていました。

動悸の症状については、
短期で非感染の1.49倍(95%CI:1.35から1.64)、
人口1万人当たり22.1人(95%CI:16.8から27.4)の増加が見られ、
長期では非感染の1.16倍(95%CI:1.05から1.27)、
人口1万人当たり8.3人(95%CI:2.4から14.1)まで、
これは明確に改善が認められていました。

筋脱力の症状については、
短期で非感染の1.78倍(95%CI:1.69から1.88)、
人口1万人当たり85.7人(95%CI:76.9から94.5)の増加が見られ、
長期では非感染の1.30倍(95%CI:1.22から1.37)、
人口1万人当たり50.2人(95%CI:39.4から61.1)まで改善が認められていました。

それ以外に溶連菌による扁桃炎のリスク、眩暈のリスクについても、
リスクとしてより低いレベルでしたが、
有意な長期に及ぶ増加が認められました。
一方で脱毛、胸部痛、咳、筋肉痛、呼吸器症状については、
短期には有意にリスクの増加が認められたものの、
6か月を超える長期ではそのリスク増加は有意ではありませんでした。

こうしたCOVID-19後遺症の症状には性差はなく、
成人と比較して小児には少なく、
より短期間で消失する傾向が認められました。
ワクチン接種者は非接種者と比較して、
呼吸困難の症状の持続は少なく、
他のCOVID-19後遺症の症状については、
接種者と明確な差は認められませんでした。
今回のデータはデルタ株の時期までのものですが、
その時点までの変異株の種別と、
このcovid-19後遺症の症状との間には、
明確は差は認められませんでした。

このように軽症の新型コロナウイルス感染症罹患後の、
COVID-19後遺症の症状の頻度は、
概ね低いレベルのもので、
多くの症状は1年以内には改善する性質のものです。

その一方で1年を超えて持続している事例があることもまた事実で、
今後その有効な方策についての研究に期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(2)  コメント(0) 

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。