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極私的新型コロナウイルス感染症の現在(2023年1月13日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はクリニック周辺の感染症状況です。

相変わらず感冒症状の主体は新型コロナ、
という状況は続いています。

咽頭の所見を確認して、
咽頭後壁の発赤が明瞭にある場合には、
最近は抗原検査(インフルエンザと新型コロナの同時測定)で、
チェックをしているのが8割以上で、
それで7割くらいは診断が付くので、
診断困難な事例のみRT-PCR検査に廻す、
という方針で診療をしています。

咽頭後壁の発赤が著明でなく、
症状も軽症の場合には、
抗原検査では偽陰性となるケースが多いので、
RT-PCRを優先して施行しています。

咽頭後壁の発赤でインフルエンザが診断出来る、
と言われるような方もいますが、
以前書いたように僕は懐疑的で、
インフルエンザの流行期にはしばしば見られた咽頭所見が、
今はほぼ新型コロナの所見として見られているのが実際です。

ですから、抗原検査施行の振り分けとしては有効でも、
インフルエンザと新型コロナの鑑別には、
役に立たないという気がします。

症状は一般に軽症で、
ワクチン未接種で若い人は、
高熱と寒気で急性発症というケースが多く、
「これはインフルエンザか…」と思って検査をすると、
新型コロナというケースが多いのが現状です。

勿論インフルエンザA型の感染も散見はされますが、
敢くまでチラホラという感じです。

高齢者主体の新型コロナによる死亡事例が、
多く報告されて問題となっています。

クリニックで診療している感触としては、
全体に新型コロナの症状は軽症化していると思います。
肺炎の事例も一時は多く認められたのですが、
最近は少ないという印象を持っています。

それでどうして死亡事例が多いのかについては、
幾つかの可能性が想定されます。

その1つは実際の感染者と報告数との乖離です。

2022年の9月下旬以降、
原則65歳以下では、
一部を除き保健所の届け出は対象外となりましたから、
自宅で抗原検査をして陽性でもそれっきり、
というような患者さんが増加しています。
届け出の代わりに陽性者登録という仕組みはあるのですが、
登録は義務ではなく、
結構面倒なので、
多くの方は登録をせずにそのまま療養している、
ということが多いと思います。
たとえば家族5人が感染しても、
登録は1人だけ、というようなことも多いのですね。
これでは報告数は全く実数を反映していないということになり、
潜在的には数倍から10倍を超えるような感染者が、
いることが想定されます。

つまり死亡率はそのままか、もしくはより低いのに、
把握されている感染者数がごく一部に過ぎないので、
死亡者数が目立ってしまう、
という理屈です。

これは大学病院で診療をしている精神科の医師の事例ですが、
発熱から新型コロナの感染を疑い、
自分で抗原検査を施行して陽性を確認。
大学から陽性者登録をするよう指示されたため、
登録をやりかけたものの、
検査キットの画像を保存せず、キットを捨ててしまい、
医療機関にも掛かっていなかったので、
登録が出来ず、
「ええい、面倒臭い、もう止めた」
と登録をしかなった、という話がありました。
実話です。

専門家の筈の医師でさえそうなのですから、
一般の方が登録をしなくても、
責める訳にはゆきません。

この間拝見した近隣の大学病院の先生のコメントでは、
救急車で担ぎ込まれた高齢者を、
入院後に検査すると陽性というケースが増えている、
というものがありました。

確かに高齢者では発熱も少なく、
軽度の感冒症状のみというケースが増えていて、
そのため新型コロナの診断自体下っていないのですが、
急に呼吸不全などを起こすというケースが、
一定レベルあるのではないかと思います。

以前であれば、軽症の患者さんでも、
積極的に検査をするという流れがあったのですが、
今は国の方針としても、
「軽症者は医療機関を受診する必要はない」
という考え方なので、
結果として診断が遅れて重症化する、
というケースが多いのです。

つまり、これが死亡数の多くなったもう1つの可能性で、
高齢者の感染が初期に診断されないケースが増えていて、
重症化への対応も遅れてしまっている、
という可能性が考えられるのです。

これは昨年末に老人ホームで感染した高齢者のケースですが、
微熱や咳痰など、軽症の感冒症状で発症し、
その後酸素飽和度の低下があったので、
病院ではない都の療養施設に入所となりました。
1週間後に療養期間は終了としたとして、ホームに戻ったのですが、
戻った日から酸素飽和度は90を切る低値で、
咳や痰がらみも続き、
翌日には高熱が出ました。
それで保健所に再度相談して、
今度は近隣の総合病院に入院。
結果はCOVID-19に併発した細菌性肺炎でした。

これは以前であれば、最初から入院となったケースなのですが、
最近は中間施設的な位置づけの高齢者療養施設で経過をみる、
というケースが増えていて、
そこでしっかり健康観察が行われていれば良いのですが、
検査などは行わない施設なので、
療養期間が過ぎれば機械的に退所、
ということが多いのでは、
という印象を持っています。

この方がたとえばホーム入所者ではなく、
ご自宅にお帰りになったとすれば、
肺炎が悪化して手遅れになった可能性が、
高かったことは想定されるところです。

このように、高齢者の療養や健康観察のレベルに、
以前よりばらつきが大きく、
結果として重症化リスクの高い高齢者が、
放置されて悪化する事態を招いているのではないか、
という想定も可能です
これが僕の考える3つめの可能性です。

今後の状況がどう動くかは分かりませんが、
加納な限り発熱外来は継続して、
最低限出来ることを続けたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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