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抗菌ペプチドによるCOVID-19予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
COVID-19と抗菌ペプチド.jpg
Hypothesis and Theory誌に、
2022年5月12日ウェブ掲載された、
抗菌ペプチドの、
新型コロナウイルス感染症への有効性を検証した解説記事です。

抗菌ペプチドというのは、
自然免疫の一翼を担っている、
最近注目されている物質です。

免疫には自然免疫と獲得免疫の2種類があります。

自然免疫というのは、
侵入した病原体の性質に関わらず、
最初に働く免疫系のことです。

抗菌ペプチドは多くの病原体に対する、
抗菌作用や抗炎症作用、細菌毒素の中和作用などを持ち、
その代表的な物質がカテリシジンです。
カテリシジンは哺乳類や魚類、鳥類などに広く発現していて、
人間ではLL-37というタンパク質が、
唯一のカテリシジンとして同定されています。

カテリシジンは好中球のような白血球や、
皮膚などの上皮細胞で産生され放出されていますが、
2015年のScience誌に非常に興味深い研究結果が報告されました。

ネズミの実験によると、
皮膚の黄色ブドウ球菌の感染症に対して、
皮下の脂肪組織が感染に伴って増殖し、
その脂肪細胞からカテリジンが大量の放出される、
という現象が確認されたのです。

脂肪細胞が免疫に関与していて、
それが急性感染に伴って自然免疫で重要な役割を果たす、
という非常に興味深い知見です。

カテリシジンは新型コロナウイルスに対しても、
感染予防や抗炎症作用を持っていると考えられています。

活性型ビタミンDは、
カテリシジンの分泌刺激になるとされていて、
それがビタミンDの免疫調整作用と関連している可能性があります。

その活用はまだ現実のものではありませんが、
今後その活性を確実に高めるような方法が開発されれば、
合成された抗菌剤のように、
耐性菌を増やすような有害事象もないと考えられますから、
感染症対策のブレイクスルーになる可能性を秘めているのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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