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松尾スズキ「ツダマンの世界」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ツダマンの世界.jpg
松尾スズキさんの久しぶりの新作が、
渋谷のシアターコクーンで上演されました。

今回は昭和初期から戦後すぐくらいを舞台に、
ツダマンと称された作家と、
太宰治をモデルにしたその弟子との葛藤を軸にして、
フェミニズムの時代から俯瞰して男女の性の問題を、
松尾さんなりに咀嚼してロマネスク的な舞台に仕上げた作品です。

タイトルロールを阿部サダヲさんが演じていて、
弟子の作家を間宮祥太朗さんが演じていますが、
どちらかと言えば吉田羊さん、江口のり子さん、笠松はるさんといった、
女性陣の生きざまに力点が置かれた作品です。
ラストはちょっと根本宗子さんばりに、
女性陣が自分の主張を客席に向かって歌い上げる、
というような趣向になっています。

阿部サダヲさんはどちらかと言えば引いた芝居に終始し、
皆川猿時さんと村杉蝉之介さんが、
かつての松尾作品の狂気を孕んだ役柄を演じますが、
以前と比べればかなり大人しい雰囲気で、
役者の狂気が梃子となって、
作品世界が予想もしなかった方向に転がり出すような、
昔の大暴れを期待すると、
やや肩透かしの気分にもなります。

僕はかつての「愛の罰」や「嘘は罪」で松尾戯曲の虜になり、
多くの地獄巡りを共に旅したという実感があるので、
勿論かつてのそうしたお芝居が、
今の社会状況やモラル意識、
フィクションで許容される表現のようなものに、
抵触する部分のあることは理解していますが、
それに匹敵する別種の魅力が今回の新作にあるかと言うと、
あまりなかったように感じました。

おそらく明治から昭和の文豪の世界というものも、
今後は今の倫理観から俯瞰されて糾弾され、
その作品の価値も否定される流れになるのだと思いますが、
松尾さんにはもっと自由度のある世界で、
心ゆくまでその妄想の翼を広げて欲しいな、
というようには感じました。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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