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城山羊の会「温暖化の秋」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診ですが、
区民健診の委託日なので健診を朝からやる予定です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
温暖化の秋.jpg
山内ケンジさんの作・演出による城山羊の会は、
別役実に似た不条理演劇のテイストを持ちながら、
シュールでエロチックでブラックユーモアに満ちた、
独特の台詞のやり取りが一番の魅力で、
以前からの常連の岡部たかしさんや岩谷健司さんは、
今ではドラマやCMに頻繁に登場する人気者になっています。

今回の舞台はいつものメンバーに、
趣里さんとシソンヌのじろうさんなど、
豪華なメンバーが加わります。

舞台はKAATの大スタジオで、
センターステージに近いような感じで、
スタイリッシュな舞台が組まれています。
小空間で囁き声というスタイルが特徴の城山羊の会ですが、
今回は結構声を張って話す場面も多く、
役者さんはマイクを付けて、
「ほんのり」と拡声しているという感じの演出でした。

新型コロナ以降の舞台では、
コロナ禍の心の動きを内容に取り入れているところが特徴で、
今回の作品では屋外を舞台にして、
主人公の趣里さん以外はマスクを付けて登場し、
徐々にマスクを外していって、
前半が終わると全員がマスクをしていない、
という構成になっています。

趣里さんは飲食店でマスクを忘れた、
という設定なのですね。
要するに「何かを隠す」ということをマスクに象徴させて、
そこにやや淫靡なものを纏わせ、
それを取るという行為が連鎖するところに、
抑圧からの解放を見て、
そこから舞台が動いて行くという趣向です。

なるほど、さすが、考えたな、
という感じです。

ただ、難しいのですが、
今回その趣向が成功していたのかと言うと、
ちょっと微妙な感じはあるのですね。

マスクをしている、というビジュアルは、
どうも演劇に馴染まないんですね。
不自由な感じや鬱陶しい感じはするのですが、
それでいて抑圧やエロスのようなものは感じないのです。
どちらかと言えば、
やや不潔な感じがする、というくらいですね。

これは僕のただの推測ですが、
作者はもっとマスク推しで行きたかったと思うのですね。
最初は全員がマスクを付けていて、
なんだかんだで1人ずつマスクを外していって、
それで気分に変化が生じてきて、
でも頑なにマスクをし続ける人もいて、
というようなお話ですね。
イメージしているだけなら、
なかなか面白そうですよね。
リアルにも行けるし、
ちょっと不条理劇にも出来そうでしょ。

でも、実際にやってみると、
観客としてはあまり面白くないんですね。
実際最初に役者さんがマスク姿で登場した時、
「えっ、まさかこのままマスクで芝居するの?」
と客席でマスクをしているこちらは、
ちょっとうんざりするような気分になったんですね。
マスクをしたままで普通の芝居をするのは、
とても詰まらなくて観ていられないんですね。

それが分かってしまったので、
今回のお芝居でもその設定は前半にあるだけで、
その後は全員マスクは外してのお芝居になっているのです。

でも、それなら、
何で最初にやったの、という感じが、
どうしても残ってしまいます。

今回はトータルにはかなり別役実演劇に、
寄せているという感じがあります。
中空に浮かぶリンゴというシュールなイメージと、
それが後半になってもう一度登場して、
趣里さんの死と再生の道具になるという趣向が面白く、
役者は皆手練れが揃っていますから、
安心してそのシュールで不穏な世界に、
ゆったりと身を浸すことが出来ます。

顔芸というのか、
台詞とは違う感情を、
顔に漂わせてそれを観客に明確に感じさせる、
という技術が皆さん素晴らしく、
それを鑑賞するだけで充分元は取った、
という気分にさせられます。

ただ、今回は最初のマスク談義が影響したのか、
全体にやや散漫な印象があって、
ここぞというところの押しも弱い、
という感じがありました。
顔芸を堪能するには、
劇場が大き過ぎるというきらいがありました。
あと、大好きな岡部たかしさんが、
最近の作品では実年齢より老けた役に振られていて、
その点も物足りなく感じました。
ファンとしてはもっと大暴れをして欲しいのです。

そんな訳で今回は今一つという感じのあった城山羊の会ですが、
大好きな劇団(企画集団という方が適切でしょうか)であることは間違いがなく、
次回はまた来年の冬の公演、
ということのようですから、
今から楽しみにしながら、
この1年を乗り切りたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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