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中性脂肪低下療法の心血管疾患予防効果(ぺマフィブラートの臨床データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
パルモディアの上乗せ効果.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2022年11月24日掲載された、
中性脂肪低下療養の有効性についての論文です。

血液中の脂質であるコレステロール、
特にLDLコレステロール濃度が高値であることが、
心筋梗塞などの心血管疾患のリスクとなり、
主にスタチンと呼ばれるコレステロール降下剤の使用により、
心血管疾患の予防効果(明確なのは特に再発予防効果)が認められることは、
多くの精度の高い臨床データによって確認されている事実です。

ただ、コレステロールを充分低下させても、
たとえば2型糖尿病の患者さんでは心血管疾患のリスクはまだ高く、
その原因の1つと想定されているのが、
中性脂肪の高値とそれに伴うHDLコレステロールの低値です。

血液中の中性脂肪の高値が、
心血管疾患のリスクを高める因子であることは、
多くの疫学データで確認されている事実です。
しかし、中性脂肪を薬剤で低下させるような臨床試験では、
偽薬との比較で明確な心血管疾患リスクの低下は、
これまでにあまり確認されていません。
ただ、サブ解析において、
中性脂肪が高くHDLコレステロールの低い糖尿病の患者さんでは、
一定の有効性が示唆されるデータもあります。

中性脂肪の低下療法は効果がないのでしょうか?
それとも、たとえば対象を糖尿病の患者さんに絞り込めば、
一定の有効性が確認されるのでしょうか?

この問題についてはまだ結論が出ていないのです。

そこで今回の研究では、
最近日本でも使用頻度の高い中性脂肪硬化剤である、
ペマフィブラート(商品名パルモディアなど)を使用して、
その有効性を検証しています。

対象となっているのは、
世界24か国で登録された2型糖尿病の患者さんで、
空腹時の中性脂肪が200から499mg/dLと軽度から中等度の高値、
HDLコレステロールが40mg/dL以下の、
トータル10497名で、
くじ引きで2つの群に分けると、
患者さんにも主治医にも分からないように、
一方はペマフィブラートを1日0.4㎎で使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
中間値で3.4年の経過観察を施行しています。

対象者の3分の2は心筋梗塞などの心血管疾患の既往があり、
両群ともほぼ7割の患者さんでは、
コレステロール降下剤のスタチンが使用されていました。

その結果、
ペマフィブラートの4か月の投与により、
偽薬と比較して中性脂肪は平均で26.2%低下し、
VLDLコレステロールも25.8%低下、
レムナントコレステロールも25.6%低下していました。
しかし、急性心筋梗塞と脳卒中、
心臓のカテーテル治療と心血管疾患による死亡を併せたリスクには、
両群で有意な差は認められませんでした。

つまり、2型糖尿病で薬により中性脂肪を低下させても、
明確なそれによる心血管疾患の予防効果は、
確認されなかったという結果です。

スタチンに上乗せして中性脂肪の降下療法を施行しても、
現時点でそれにより心血管疾患のリスクが低下する、
という根拠は現時点では明確なものはないと、
そう考えておいた方が良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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