SSブログ

糖尿病性神経障害に対する併用療法の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
糖尿病性神経障害の併用療法.jpg
Lancet誌に2022年8月27日掲載された、
糖尿病性神経障害に対する、
複数の薬剤の併用療法の効果についての論文です。

糖尿病性末梢神経障害は、
糖尿病の代表的な小血管の合併症の1つで、
糖尿病の患者さんの半数はその人生において発症し、
その約半数が神経障害性疼痛と呼ばれる痛みを伴います。
この痛みは不眠や抑うつ気分などの原因にもなり、
生活の質を落とす結果になることも多いのです。

この糖尿病性末梢神経障害による疼痛の治療において、
現状主だった国際的なガイドラインで第一選択として推奨されているのは、
プレガバリン(商品名リリカなど)、ガバペンチンの、
疼痛改善効果のある抗けいれん剤の誘導体と、
アミトリプチリン(商品名トリプタノールなど)、
デュロキセチン(商品名サインバルタなど)などの、
慢性疼痛に有効な抗うつ剤です。

通常そのいずれかを単剤で使用して治療を行いますが、
それで充分な有効性が得られない時には、
抗けいれん剤の誘導体と抗うつ剤を併用することが、
しばしば行われています。
しかし、実際にどの組み合わせがより有効性が高いのか、
というような点については、
あまり精度の高い検証が行われていないのが実際です。

そこで今回の研究では、
イギリスの複数施設において、
一定レベル以上の重症度の糖尿病性末梢神経障害の患者、
トータル140名をくじ引きで6つの群に分けると、
患者さんにも主治医にも分からないように、
プレガバリン、アミトリプチリン、デュロキセチンの3剤の単独治療と、
アミトリプチリンの治療を行ってからプレガバリンを上乗せした場合、
プレガバリンの治療を行ってからアミトリプチリンを上乗せした場合、
デュロキセチンの治療を行ってからプレガバリンを上乗せした場合の、
6種類の治療を施行してその比較を行っています。
治療は16週の時点で評価されています。

その結果、
3剤の単独治療と比較して、
いずれの併用治療も症状改善において有効性が認められましたが、
3種類の併用療法間の比較では、
どの組み合わせも明確な有効性の差は認められませんでした。

従って、
現状は3剤のうちいずれを使用しても大きな差はなく、
その1剤で充分な効果が得られない場合は、
メカニズムの異なるもう1剤を、
併用して経過をみることが妥当であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(3)  コメント(0) 

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。