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2型糖尿病と膵臓癌発症リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2型糖尿病と膵臓癌リスク.jpg
the Lancet Regional Health- Western Pcific誌に、
2022年9月16日ウェブ掲載された、
2型糖尿病の発症年齢や罹病期間と、
膵臓癌の発症リスクとの関連についての論文です。

2型糖尿病の患者さんでは、
糖尿病のない一般人口と比較して、
膵臓癌の発症リスクが高いことが知られています。

ただ、糖尿病の発症年齢や罹病期間、
血糖コントロールの状態などと、
膵臓癌リスクとの間に、
どのような関連があるのかについては、
あまり明確なことが分かっていません。

今回の研究は中国上海において、
新たに診断された2型糖尿病の患者さん、
トータル428362名を登録して8年の経過観察を施行。
遺伝子変異の解析から推計された東アジア地域の、
平均的な膵臓癌の罹患率との比較検証を行っています。

その結果、
平均で4.5年の観察期間中に1056件の膵臓癌が診断され、
その年間10万人当たりの罹患率は、
55.28件と計算されました。
これは遺伝子変異から推測されるこの地域の平均的な罹患率より、
1.54倍(95%CI:1.45から1.64)有意に高いものになっていました。

膵臓癌の罹患率は年齢に伴い増加し、
特に2型糖尿病のある高齢者で高くなっていました。
膵臓癌の発症リスクは、
2型糖尿病の発症年齢が低いほど高く、
年齢が20から54歳においては、
平均的な罹患率の5.73倍(95%CI:4.49から7.22)有意に増加していました。

膵臓癌の発症リスクは、
2型糖尿病の罹病期間が長いほど増加し、
空腹時血糖が180mg/dL以上で明確な増加を示していました。

このように今回の中国での解析においては、
2型糖尿病の患者さんでは膵臓癌のリスクは高く、
それは糖尿病の発症が若いほど、
罹病期間が長いほど、
そして血糖値がより高いほど高くなっていました。

今後こうしたリスクの高い患者さんに対して、
どのような介入がその予後の改善に重要なのか、
定期的な検査を行って早期発見を目指すのか、
血糖コントロールの改善を行うことにより、
膵臓癌のリスク自体が抑制される可能性があるのか、
そうした点についての更なる検証に期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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