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痛風発作と心血管疾患リスクとの関係 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
痛風発作後の心血管疾患リスク増加.jpg
JAMA誌に2022年8月2日掲載された、
痛風発作とその後の心血管疾患の発症との関連についての論文です。

高尿酸血症と痛風は、
以前は痛風発作や尿路結石、
腎機能低下などとの関係が主に重視されていましたが、
最近では心血管疾患のリスクとの関連が、
注目されるようになっています。

新型コロナウイルス感染症の後に、
心筋梗塞や脳卒中が増えるという知見がありますが、
炎症は凝固系に影響を与えて血栓症のリスクを高めることは、
新型コロナウイルスに限ったことではありません。

痛風発作は自己炎症と呼ばれる関節の炎症ですから、
その後に心血管疾患のリスクが増加するとしても、
不思議なことではないのです。

ただ、それを証明するようなデータは、
これまであまり存在していませんでした。

今回の研究はイギリスにおいて、
プライマリケアの医療データを解析することにより、
この問題の検証を行っています。

新規に痛風と診断された62574例のうち、
10475例が急性心筋梗塞や脳卒中の心血管疾患を発症していました。
ここで心血管疾患を発症していない痛風患者と比較して、
心血管疾患を発症している患者では、
その心血管疾患発症前60日以内の痛風発作のリスクが1.93倍(95%CI:1.57から2.38)、
61から120日以内の痛風発作のリスクが1.57倍(95%CI:1.26から1.96)、
それぞれ有意に増加していました。
一方で121日以降での痛風発作のリスクは、
有意な増加は認められませんでした。

また、心血管疾患と痛風発作の両方を発症している、
1421例を検証した解析では、
1日1000人当たりの心血管疾患発症率は、
痛風発作前150日以内と発作後181から540日では1.32件であったとの対して、
痛風発作後0から60日では2.49件、
61から120日では2.16件と高くなっていました。

つまり、
痛風発作を起こすと、
その後120日以内、特に60日以内の心血管疾患のリスクは、
高くなると想定されました。

このことから、
痛風発作を起こした患者の管理においては、
発作のコントロールや尿酸値のコントロール以外に、
発作後4か月の心血管疾患のリスクが増加することを想定して、
その予防的管理を行うことが重要であると考えられます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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