SSブログ

歩く速さと健康との関係(ニュージーランドの住民研究) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
歩く速さと脳機能.jpg
2019年のJAMA Network Open誌に掲載された、
45歳の時点での歩く速さと脳機能や健康との関連についての論文です。

高齢者において、
歩く速さと体力や脳の機能が関連している、
というような報告は数多くあります。

年齢を重ねるにつれ、
速く歩くことは困難になります。

歩くということは全身を使った複合的な動作なので、
筋肉の力や周辺への注意力、
平衡感覚などが必要となります。
それがスムースに連動して出来なくなることは、
認知機能の低下の1つの指標にもなるのです。

それでは、より若い年齢での歩く速さは、
健康と同じような関連を持っているのでしょうか?
それとも、単純にその人の個性と考えて良いものなのでしょうか?

この点については、
あまり明確なことが分かっていませんでした。

今回の研究はニュージーランドにおいて、
1972年から73年に生まれた住民の健康状態を、
経時的に観察した疫学データを活用したもので、
45歳の時点で歩行速度を測定し、
それまでの生育歴や健康状態、脳機能との関連を検証しています。

歩行速度は904名で測定され、
ベルトの上を歩くような装置を使用して、
通常の歩行速度と、
最高歩行速度が測定されます。

その結果、歩行速度、特に最大歩行速度と、
脳の機能や健康との間には関連があり、
45歳の時点の最大歩行速度が遅いほど、
脳の容量は小さく、皮質の厚みは薄く、
3歳の時点での神経認知機能の低下が、
45歳の時点での歩行速度の低下と関連していることも確認されました。

要するに、
45歳の時点での歩行速度は、
その時点での体力を反映しているばかりでなく、
小児期からの脳の発達と、
その老化の進行を反映している可能性がある、
という結果です。

これは45歳時点のみの測定なので、
まだ分かることは限られているのですが、
今後経時的に歩行速度を測定するような研究が行われることにより、
歩行速度と脳機能との関係は、
より医療や健康にとって重要な指標となるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(7)  コメント(0) 

nice! 7

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。