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日本人のピロリ菌感染率の推移(2017年のメタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ピロリ菌感染の日本人の頻度.jpg
今年のScientific Reports誌に掲載された、
1908年から2003年に生まれた日本人のピロリ菌感染率を、
これまでの疫学データをまとめて解析して、
総合的に検証した論文です。
愛知医科大学の研究者による解析です。

ピロリ菌という細菌の感染が胃の粘膜で持続することにより、
萎縮性胃炎が進行し、
胃癌のリスクが増加することは広く知られている知見で、
このために健康保険において、
一定の要件を満たす場合には、
抗生物質や胃酸の抑制剤を組み合わせた、
ピロリ菌の除菌治療が認められています。

ピロリ菌の感染は、
井戸水の飲用や食事を口移しで与えることなどで、
小児期に感染が成立すると推定されていて、
そのためアジアなどの衛生状況が悪い地域で、
感染率が高いと報告されています。

日本においても高齢者では感染率が高く、
若年者では年齢が低いほど低くなることが複数報告されていますが、
報告によってもその頻度にはばらつきがあり、
対象人数も充分でないなど、
トータルな感染率を云々するには、
不充分なものしかありませんでした。

今回のデータはこれまで発表された疫学データをまとめて解析する、
一般化加法混合モデルによる重回帰分析という手法で、
日本人の出生年齢毎のピロリ菌感染率を提示しています。

こちらをご覧ください。
ピロリ菌感染率の図.jpg
横軸は出生年齢で縦軸がピロリ菌の感染率です。
出生年齢が1930年代以降、
年齢が下る毎に予測された感染率が低下していることが分かります。

具体的には、
出生年齢が1910年が60.9%(95%CI; 56.3から65.4)、
1920年が65.9%(95%CI; 63.9から67.9)、
1930年が67.4%(95%CI; 66.0から68.7)、
1940年が64.1%(95%CI; 63.1から65.1)、
1950年が59.1%(95%CI; 58.2から60.0)、
1960年が49.1%(95%CI; 49.0 から49.2)、
1970年が34.9%(95%CI; 34.0から35.8)、
1980年が24.6%(95%CI; 23.5から25.8)、
1990年が15.6%(95%CI; 14.0から17.3)、
2000年が6.6%(95%CI; 4.8から8.9)となっています。

実際の文献では1年刻みでの予測値が記載されていて、
皆さんが生まれた年のピロリ菌感染率を、
知ることが出来るようになっています。

これはあくまで予測値なので、
それが実際であるという訳ではないのですが、
ここまでまとまったものはこれまでにはなかったと思いますし、
現状では一定の信頼のおけるものと考えて良いと思います。

この劇的なピロリ菌感染率の低下が、
今後の胃癌の罹患率の低下にどの程度反映されるのかは、
まだ今後の課題だと思いますが、
その点についても今後のトータルな検証を待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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