骨粗鬆症治療薬の直接比較(テリパラチドとリセドロネート) [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年のLancet誌に掲載された、
有効性の高い治療薬として使用されている、
2種類の骨粗鬆症治療薬の効果を、
直接比較した論文です。
現状最も広く使用されている閉経後の骨粗鬆症治療薬は、
ビスフォスフォネートという強力な骨吸収の抑制剤で、
その効果は今回対象薬となっている、
リセドロネート(商品名アクトネル、ベネットなど)のデータでは、
2から3年の継続的使用で、
トータルな骨折のリスクを4割程度減少させています。
一方でより強力な骨吸収の抑制剤として、
抗RANKL抗体という注射薬があり、
その1つであるデノスマブの効果は、
3年間で背骨の骨折のリスクを68%、
股関節の骨折のリスクを40%低下させた、
というデータが発表されています。
また別のメカニズムを持つ注射薬として、
骨形成を促進させる作用を持つ、
副甲状腺ホルモンの誘導体の注射薬があり、
その1つである週1回の注射のテリパラチド(商品名テリボンなど)は、
18か月の使用で新規骨折のリスクを70%以上低下させている、
というデータが報告されています。
こうしたデータからは、
ビスフォスフォネートより、
デノスマブやテリパラチドの方が、
骨折リスクの高いような高齢者では、
有用性が高いように思われます。
ただ、骨折のリスクを評価の項目とした、
厳密な方法でのこうした薬剤の直接比較の試験は、
実際にはこれまであまり行われていませんでした。
今回の研究では偽薬や偽の注射を使用した厳密な方法で、
今後の骨折のリスクが高い閉経後の女性に対する、
テリパラチドとリセドロネートの骨折予防効果を、
比較検証しています。
対象は骨量がTスコアで-1.50以下に低下していて、
脊椎の圧迫骨折の既往のある閉経後の女性、
トータル680名で、
本人にも治療者にも分からないように、
クジ引きで2つの群に分けると、
一方はリセドロネートを週に1回35ミリ内服し、
もう一方はテリパラチドを1日1回20μg皮下注射して、
2年間の治療を継続して、
その間の骨折の頻度を比較検証しています。
この用量はリセドロネートは日本では17.5ミリですから、
試験で使用された量の半分で、
テリパラチドは週1回56.5μgの皮下注射ですから、
使用法自体が異なります。
どちらが選ばれたのかは分からないように、
偽の注射と偽の薬が使用されています。
その結果、
2年間の治療期間中に、
新規の背骨の骨折が、
リセドロネート群では12.0%に当たる64名に発症したのに対して、
テリパラチド群では5.4%に当たる28名に発症していて、
テリパラチドはリセドロネートと比較して、
背骨の骨折のリスクを56%(95%CI; 0.29から0.68)、
有意に低下させていました。
臨床的な骨折のリスクも、
テリパラチド群では52%(95%CI; 0.32から0.74)、
リセドロネートと比較して有意に低下していました。
一方で脊椎以外の脆弱性骨折については、
両群で有意差はありませんでした。
このように、骨折のリスクの高い骨粗鬆症の患者さんの骨折予防については、
2年間くらいの治療期間において、
テリパラチドによる治療がリセドロネートと比較して、
有意に優れているという結果が得られました。
そのリスクの差は特に背骨の圧迫骨折の予防において顕著なので、
この結果のみをもってテリパラチドを第一選択で使用するべき、
とまでは思いませんが、
今後の治療選択の1つの重要な手がかりとしての有用性は、
あるように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年のLancet誌に掲載された、
有効性の高い治療薬として使用されている、
2種類の骨粗鬆症治療薬の効果を、
直接比較した論文です。
現状最も広く使用されている閉経後の骨粗鬆症治療薬は、
ビスフォスフォネートという強力な骨吸収の抑制剤で、
その効果は今回対象薬となっている、
リセドロネート(商品名アクトネル、ベネットなど)のデータでは、
2から3年の継続的使用で、
トータルな骨折のリスクを4割程度減少させています。
一方でより強力な骨吸収の抑制剤として、
抗RANKL抗体という注射薬があり、
その1つであるデノスマブの効果は、
3年間で背骨の骨折のリスクを68%、
股関節の骨折のリスクを40%低下させた、
というデータが発表されています。
また別のメカニズムを持つ注射薬として、
骨形成を促進させる作用を持つ、
副甲状腺ホルモンの誘導体の注射薬があり、
その1つである週1回の注射のテリパラチド(商品名テリボンなど)は、
18か月の使用で新規骨折のリスクを70%以上低下させている、
というデータが報告されています。
こうしたデータからは、
ビスフォスフォネートより、
デノスマブやテリパラチドの方が、
骨折リスクの高いような高齢者では、
有用性が高いように思われます。
ただ、骨折のリスクを評価の項目とした、
厳密な方法でのこうした薬剤の直接比較の試験は、
実際にはこれまであまり行われていませんでした。
今回の研究では偽薬や偽の注射を使用した厳密な方法で、
今後の骨折のリスクが高い閉経後の女性に対する、
テリパラチドとリセドロネートの骨折予防効果を、
比較検証しています。
対象は骨量がTスコアで-1.50以下に低下していて、
脊椎の圧迫骨折の既往のある閉経後の女性、
トータル680名で、
本人にも治療者にも分からないように、
クジ引きで2つの群に分けると、
一方はリセドロネートを週に1回35ミリ内服し、
もう一方はテリパラチドを1日1回20μg皮下注射して、
2年間の治療を継続して、
その間の骨折の頻度を比較検証しています。
この用量はリセドロネートは日本では17.5ミリですから、
試験で使用された量の半分で、
テリパラチドは週1回56.5μgの皮下注射ですから、
使用法自体が異なります。
どちらが選ばれたのかは分からないように、
偽の注射と偽の薬が使用されています。
その結果、
2年間の治療期間中に、
新規の背骨の骨折が、
リセドロネート群では12.0%に当たる64名に発症したのに対して、
テリパラチド群では5.4%に当たる28名に発症していて、
テリパラチドはリセドロネートと比較して、
背骨の骨折のリスクを56%(95%CI; 0.29から0.68)、
有意に低下させていました。
臨床的な骨折のリスクも、
テリパラチド群では52%(95%CI; 0.32から0.74)、
リセドロネートと比較して有意に低下していました。
一方で脊椎以外の脆弱性骨折については、
両群で有意差はありませんでした。
このように、骨折のリスクの高い骨粗鬆症の患者さんの骨折予防については、
2年間くらいの治療期間において、
テリパラチドによる治療がリセドロネートと比較して、
有意に優れているという結果が得られました。
そのリスクの差は特に背骨の圧迫骨折の予防において顕著なので、
この結果のみをもってテリパラチドを第一選択で使用するべき、
とまでは思いませんが、
今後の治療選択の1つの重要な手がかりとしての有用性は、
あるように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。
誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ
- 作者: 石原藤樹
- 出版社/メーカー: 総合医学社
- 発売日: 2016/10/28
- メディア: 単行本
2017-12-05 08:45
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