劇団チョコレートケーキ「60’s エレジー」 [演劇]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日は何本かの記事をアップする予定です。
まずはこちら。
新宿のサンモールスタジオで、
5月21日まで劇団チョコレートケーキの新作公演が行われました。
これは日本の1960年代の、
学生運動や東京オリンピック、
高度成長の歴史と、
その年代を希望に燃えた若者として過ごした、
1人の青年の末路を描くことで、
より下の世代が60年代の日本の総括に挑んでいます。
作品は現在の東京で孤独死を遂げた老人が、
残した手記を読み解くという経過で行われます。
そこで描かれるのは、
端的に言えば高度成長の全否定の物語です。
舞台は蚊帳の工場で、
地方から就職のために上京した少年は、
工場の2代目社長の好意で、
住み込みで働くと共に夜間の大学にも通えるように、
学費の援助も受けています。
しかし、高度成長と共に日本人の生活は大きく変わり、
蚊帳の需要は急激に減少してゆきます。
社長は時代に変化に合わせて仕事を変えることは出来ず、
まず社長の実の弟の首を切り、
次にはベテランの職人の首を切って、
工場と少年だけは守ろうとします。
しかし、少年は大学で学生運動にのめり込み、
親代わりの社長夫婦の心を思いやろうとはしません。
工場は閉鎖され、その後にアパートが建つと、
退職して天涯孤独の老人となったかつての少年は、
そこが取り壊される直前に自ら命を絶つのです。
劇団チョコレートケーキ面目躍如の感のある力作で、
個人的には新作としては2014年の「サラエヴォの黒い手」以来で、
最も気に入りました。
話はやや単純化され過ぎていて、
経営に苦しくなってリストラをするという段取りが、
何度も繰り返されるのがやや単調に感じますが、
団塊の世代へのエレジー(挽歌)として、
その筆法は力強く、
高度成長それ自体を切って捨てるような過激さは、
ちょっとより上の世代には不可能な作劇だと感じました。
役者は劇団員の3人がそれぞれの芝居を、
熟成感を持って演じていて味わいがありました。
ただ、3人とも役作りは素晴らしいのですが、
長い年月のドラマとしては、
演技の振り幅がやや小さく、
観続けていると単調に感じるきらいはありました。
ただ、これは劇の構造自体にも通じる問題であったように思います。
舞台装置も小空間に緻密に作り込まれていて見応えがありました。
ただ、これも小物を含めて、
数年が経っても何1つ変化がないので、
その点はやや不満に感じました。
総じて、一種の年代記として観るには、
その変化が見えにくく、
繰り返しが多い、という欠点はあったように思います。
今回の成功は矢張り会場が小さかったことで、
劇団チョコレートケーキは、
シアター・イースト(ウェスト?)やシアタートラムなど、
もう少し大きな空間での公演もありましたが、
密度の点で矢張り少し問題があったように感じました。
駅前劇場やサンモールスタジオくらいのキャパになると、
その凝集度が高まって、
凄みのあるような迫力を生むのです。
ただ、今後この集団がより大きくなるには、
もう少し大きな劇場での舞台を、
どのように高密度に保つかが、
大きな課題ではないかと感じました。
頑張って下さい。
それでは映画の話題に続きます。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日は何本かの記事をアップする予定です。
まずはこちら。
新宿のサンモールスタジオで、
5月21日まで劇団チョコレートケーキの新作公演が行われました。
これは日本の1960年代の、
学生運動や東京オリンピック、
高度成長の歴史と、
その年代を希望に燃えた若者として過ごした、
1人の青年の末路を描くことで、
より下の世代が60年代の日本の総括に挑んでいます。
作品は現在の東京で孤独死を遂げた老人が、
残した手記を読み解くという経過で行われます。
そこで描かれるのは、
端的に言えば高度成長の全否定の物語です。
舞台は蚊帳の工場で、
地方から就職のために上京した少年は、
工場の2代目社長の好意で、
住み込みで働くと共に夜間の大学にも通えるように、
学費の援助も受けています。
しかし、高度成長と共に日本人の生活は大きく変わり、
蚊帳の需要は急激に減少してゆきます。
社長は時代に変化に合わせて仕事を変えることは出来ず、
まず社長の実の弟の首を切り、
次にはベテランの職人の首を切って、
工場と少年だけは守ろうとします。
しかし、少年は大学で学生運動にのめり込み、
親代わりの社長夫婦の心を思いやろうとはしません。
工場は閉鎖され、その後にアパートが建つと、
退職して天涯孤独の老人となったかつての少年は、
そこが取り壊される直前に自ら命を絶つのです。
劇団チョコレートケーキ面目躍如の感のある力作で、
個人的には新作としては2014年の「サラエヴォの黒い手」以来で、
最も気に入りました。
話はやや単純化され過ぎていて、
経営に苦しくなってリストラをするという段取りが、
何度も繰り返されるのがやや単調に感じますが、
団塊の世代へのエレジー(挽歌)として、
その筆法は力強く、
高度成長それ自体を切って捨てるような過激さは、
ちょっとより上の世代には不可能な作劇だと感じました。
役者は劇団員の3人がそれぞれの芝居を、
熟成感を持って演じていて味わいがありました。
ただ、3人とも役作りは素晴らしいのですが、
長い年月のドラマとしては、
演技の振り幅がやや小さく、
観続けていると単調に感じるきらいはありました。
ただ、これは劇の構造自体にも通じる問題であったように思います。
舞台装置も小空間に緻密に作り込まれていて見応えがありました。
ただ、これも小物を含めて、
数年が経っても何1つ変化がないので、
その点はやや不満に感じました。
総じて、一種の年代記として観るには、
その変化が見えにくく、
繰り返しが多い、という欠点はあったように思います。
今回の成功は矢張り会場が小さかったことで、
劇団チョコレートケーキは、
シアター・イースト(ウェスト?)やシアタートラムなど、
もう少し大きな空間での公演もありましたが、
密度の点で矢張り少し問題があったように感じました。
駅前劇場やサンモールスタジオくらいのキャパになると、
その凝集度が高まって、
凄みのあるような迫力を生むのです。
ただ、今後この集団がより大きくなるには、
もう少し大きな劇場での舞台を、
どのように高密度に保つかが、
大きな課題ではないかと感じました。
頑張って下さい。
それでは映画の話題に続きます。
2017-05-28 05:51
nice!(4)
コメント(0)
トラックバック(0)
コメント 0