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甲状腺機能低下症におけるインスリン作用の変化 [医療のトピック]

こんにちは。
石原藤樹です。

8月末で前職を退職し、
今は10月1日の北品川藤クリニック開院に向け、
準備に忙しくしています。

今日は僕自身の人間ドックに出掛けます。
大事がないといいのですが…

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
甲状腺機能低下症の.jpg
2006年のJ Clin Endocrinol Metab誌に掲載された、
甲状腺ホルモン欠乏時のインスリン作用についての論文です。
10年近く前のものですが、
この問題についてはしばしば引用されているものです。

甲状腺機能と糖尿病との間にはどのような関係があるでしょうか?

バセドウ病は甲状腺機能亢進症の代表ですが、
この時食後血糖の上昇がしばしば認められます。

ただ、教科書などに良く書かれているように、
糖尿病の基準に達するような血糖上昇を示すことは、
単独では殆どないように経験的には思います。
また、糖尿病の患者さんがバセドウ病に罹患して、
甲状腺機能亢進状態になると、
確かに血糖コントロールは悪化することが多いのですが、
それはそれほど大きな変化ではないことが、
これも殆どだと思います。

この甲状腺機能亢進症時の食後血糖の上昇は、
インスリン抵抗性が惹起されるためであることが、
ほぼ明らかになっています。

それでは、甲状腺機能低下症の場合はどうでしょうか?

甲状腺ホルモンが過剰になると、
インスリン抵抗性が惹起されるのですが、
ホルモンの欠乏時にはむしろインスリンの効きが良くなりそうですが、
実際にはそう単純ではありません。

むしろ、機能亢進時と同じように、
インスリン抵抗性は増すとする報告が多いのですが、
変わらないという報告も複数あり、
更には感受性が高まるとする報告も少数存在しています。

そこで上記の文献では、
11名の甲状腺機能低下症の患者さんと、
10名の甲状腺機能が正常のコントロールの被験者に、
人工膵臓(グルコースクランプ)を用い、
更に放射能を用いて脂肪細胞への血流量を測定するなど、
糖代謝とインスリンの脂肪細胞と筋肉細胞における動態について、
現時点で人体で可能な範囲の、
詳細な検査を行なって、
その結果を比較しています。

その結果…

甲状腺機能低下症においては、
骨格筋細胞と脂肪細胞において、
ブドウ糖の取り込みが低下していました。
つまり、インスリン抵抗性が生じています。
しかし、インスリンによる脂肪の分解は障害されていません。
甲状腺機能低下症では血液中の中性脂肪は上昇していますが、
それは脂肪の分解の亢進によるものではなく、
脂肪分解酵素などの活性の低下による、
脂肪代謝の抑制によるものであることが、
確認をされました。

つまり、
メカニズムは少し異なるようですが、
甲状腺ホルモンが過剰であっても不足していても、
インスリン抵抗性は増し、
血糖の上昇に結び付く可能性があることが、
この詳細な人体データにより、
明らかにされたのです。

それでは臨床的に甲状腺機能低下症と糖尿病とは、
どの程度の関連性があるのでしょうか?

明日はそれについての今年の論文をご紹介したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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