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脳出血後の血圧コントロールと再発リスクについて [医療のトピック]

こんにちは。
石原藤樹です。

六号通り診療所を退職し、
今、北品川藤クリニック開設に向け準備中です。
今日も打ち合わせ等、
バタバタと予定が入っています。
継続して在宅診療を行なう患者さんのところにも、
ご様子を伺いに行く予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
脳出血後の血圧と再発リスク.jpg
今年のJAMA誌に掲載された、
脳内出血後の血圧コントロールの、
再発予防効果についての論文です。

脳内出血はその名の通り、
脳の中に起こる出血ですが、
脳の表面に近い部分に起こり、
アミロイド・アンギオパチーという、
血管へのアミロイドという異常蛋白の沈着によって起こる、
主に脳葉内出血と、
より脳の深部で脳血管の動脈硬化により起こる、
深部出血の2つに大きく分かれます。

いずれも脳の深刻なダメージを与える、
重症の脳卒中ですが、
そのメカニズムは異なります。

一度脳内出血を起こした患者さんは、
その再発の危険性が増すため、
血圧が過度に上昇しないように、
血圧の管理を行なうことが重要と考えられています。

しかし、過度の降圧は、
脳の血流の低下を招き、
患者さんの予後に悪い影響を与える可能性があります。
それでは、どのくらいの降圧が望ましいのか、
という点については、
アメリカの脳卒中ガイドラインにおいて、
急性期に上の血圧が150、下が90を超えると再発リスクが高まり、
長期の降圧コントロールは、
上が130、下は80を切ることが望ましい、
という指針が示されていますが、
それほどの根拠があるものではありません。
また、脳葉内出血と深部出血には違いがあり、
脳葉内出血では血圧の関与は高くはない、
と考えられているにも関わらず、
そのタイプ毎に降圧基準を示してはいません。

つまり、現行の脳出血後の再発予防の、
血圧コントロールの指標については、
まだ明確なものがないのです。

そこで今回の臨床研究では、
アメリカの単独施設において、
脳内出血を起こし発症90日間生存した患者さん、
トータル1145名を、
平均で3年間経過観察し、
その間の血圧のコントロール状態と、
再発のリスクとの関連性を検証しています。
脳葉内出血と深部出血とに、
分けて分析されている点がポイントです。
上記のガイドラインに則り、
上の血圧が130、下が80未満がコントロール良好で、
それを超えるものが不良と判断しています。

その結果…

経過観察期間中に、
脳葉内出血の患者さん505名中、
102名が再発し、
深部出血の患者さん640名中、
44名が再発しました。

観察期間中1回でも血圧コントロールが良好であったのは、
全体の54.6%に当たる625名で、
測定した血圧全てが良好であったのは、
43.2%に当たる495名でした。

血圧コントロールが不良であった場合の脳葉内出血の再発率は、
年間1000人当たり84名出会ったのに対して、
血圧コントロールが良好であった場合の再発率は、
年間1000人当たり49名でした。

深部出血で同様の検討を行なうと、
血圧コントロールが不良であった場合の再発率は、
年間1000人当たり52名で、
血圧コントロールが良好であった場合には、
それが年間1000人当たり27名に抑制されていました。

血圧コントロールが不良であることにより、
脳葉内出血の再発リスクは3.53倍(95%CI;1.65から7.54)、
深部出血の再発リスクも4.23倍(1.02から17.52)、
いずれも有意に増加していました。

収縮期血圧が10mmHg増加する毎に、
脳葉内出血のリスクは1.33倍、
深部出血のリスクも1.54倍、
それぞれ増加する相関を示し、
この関係は収縮期血圧が120を超える当たりから既に認められました。

拡張期血圧に関しては、
深部出血については同様の傾向を示しましたが、
脳葉内出血においては相関を示しませんでした。

今回のデータからは、
脳葉内出血、深部出血いずれも血圧コントロールが悪ければ再発が増え、
良好であれば再発が減る、という結果が確認されました。

従って、
どちらのタイプの出血であっても、
なるべく上が130、下が80を下回るコントロールが推奨されます。

ただ、今回のデータは単独施設のものなので、
今後別個の集団においても、
同様の結果が出て初めて、
信頼のおける臨床データとして評価されることになるのだと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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