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ポップンマッシュルームチキン野郎「独りぼっちのブルース・レッドフィールド」 [演劇]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は3つ目の記事になります。

先日観た演劇の感想です。

今回ご紹介するのはこちら。
ポップンマッシュルームチキン野郎.jpg
吹原幸太さんが主宰して作・演出に当たり、
ストーリー性の高いコミカルな作品を得意としている、
「ポップンマッシュルームチキン野郎」の新作公演に足を運びました。

今回は文学座の渡辺徹さんが、
ゲストで主役のガンマンを演じるのが話題です。

僕はこの劇団は初見です。
勢いのある若手劇団ということで、
期待を持って出掛けたのですが、
正直僕にはあまり合わないタイプの作品であり劇団でした。

雰囲気はキャラメルボックスに似ています。
そこに劇団新感線に代表されるような、
関西のエンタメ劇団のテイストが、
少し混ざっている、という感じです。

今回の作品は西部開拓時代のガンマンの話で、
そこに復讐に燃えるガンマンが、
至近距離で銃声を聴くと、
20年の記憶が失われてしまう、
という映画の「メメント」みたいなギミックを入れて、
前半はキャラによる笑いで作品を進め、
後半でどんでん返し(ほぼ読めてしまう)をきっかけにシリアスになり、
ラストは静かで感動的なエンディングに至る、
という流れになっています。

オスカルみたいな男装の麗人や、
擬人化されたサソリやサボテンなども被り物で登場し、
そうしたキャラが意外な頑張りを見せて盛り上げる、
という辺りは新感線のスタイルですし、
西部劇のパターンに記憶障害を仕掛けとして加えて、
憎悪の連鎖や人間の悲しみに着地させる、
という辺りの作劇はキャラメルボックスを彷彿とさせます。
違う世界からゲストを呼んだり、
開演前の寸劇や、グッズの販売、
積極的なメディアの活用や、
R18指定公演のような企画も、
キャラメルボックスの戦略に似ています。

ただ、個人的には作者の世界観から作劇のスタイル、
役者さんの演技の感触から演出を含めて、
それほどのオリジナリティは感じませんでした。

開幕前の時間に寸劇をして、
それが劇団の名物ということのようなのですが、
本編と同じセットを用い、
同じようなメンバーが複数登場して、
演技のレベルやスタイルも、
本編と違いは特にないので、
あまり意味のある試みのようには思えませんでした。

キャラメルボックスや革命アイドル暴走ちゃんで、
制作の方が巧みな前説をするのは、
聴いていて楽しく、
本編への期待も高まります。
しかし、それが良いのは、
本編とは全くの別物であって、
観客の緊張をほぐしながら、
観劇への諸注意を伝え、
本編への期待を高めるのが目的なので良いのです。

開場から開演までの時間に、
本編とは別箇の芝居を上演してしまい、
演技の質感でも本編とだぶるものであるとしたら、
それは本編の興味を削ぎこそすれ、
決して高めるものにはならないのではないでしょうか?

これがまた開演の5分くらい前なら、
間違えば本編を台無しにするリスクがありますが、
ちょっとした小ネタを披露して、
そのまま本編に雪崩れ込む、
というような演出もありだとは思うのです。

しかし、今回のケースでは、
20分以上の寸劇を、
開場直後から延々と上演しているのです。

入場している観客も、
これでは話をして良いのか、
それともまだ開演前なのにじっと観ていないといけないのか、
それすら分かりません。

これは矢張りまずいと思います。

それから今回の上演では、
通常のヴァージョンとは別に、
18歳未満では入場不可の、
R18ヴァージョンが設定されています。

R18のようなステージを設けることは、
アメリカのショーなどでは一般的に行われていて、
R18というのは、
要するに子供にはちょっと見せられないような表現が、
使用されている、という意味です。

具体的にはヌードに近いダンサーのショーがあったり、
性行為を連想させるようなダンスがあったり、
猥談的なものがあったりする、というニュアンスです。
今のような時代ですから、
勿論男女は問わず、ということです。

子供と一緒にはちょっと見られないけれど、
大人同士ならニヤリとするような、
そうしたショーがあっても良いのではないでしょうか?

それで、当然そうしたものを期待したのですが、
実際には全く違っていました。

最初に吹原さん本人による説明があるのですが、
R18の内容は、
キャストの男性の中で女性物の下着を身に付けている人がいたり、
効果音に喘ぎ声が部分的に入っていたり、
というような内容なので、
正直それを聞いた瞬間に脱力しました。

ある種のギャグなのかも知れませんが、
R18と名乗っておいて、
そんな「子供騙し」のような違いで良いのでしょうか?
勿論エッチなものをやれば良い、ということではないのです。
やればやったで男なので嬉しいのですが、
やらなくても良いのです。
しかし、このような腰砕けの趣向は如何なものでしょうか?

そのセンスを含めて、
僕にはどうしても納得がいきませんでした。

こんなR18では、
やること自体に意味がないように思うのです。
むしろ反則のアドリブOKとか、
そうした方向の方が面白いのではないでしょうか?

総じて何処か空振りをしているようなところが、
作品自体にも、企画にもあると思うのです。

ただ、これは敢くまで個人的な見解で、
SNSなどでは絶賛のコメントの嵐なので、
ファンの方にとってはこれこそがエンターティンメントで、
僕と反りが合わないだけの話なのかも知れません。

すいません。
ファンや関係者の方には、
失礼なことを申し上げました。
もうほぼ行くことはないと思いますので、
どうかお許し下さい。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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あんどう

石原さん、はじめまして。今静岡から書いています。大学時代に観劇しそこねた、ふたりの女観に来ています。このお芝居タイトル&スズナリで検索したところ、石原さんブログにあたりました。ご覧になっておられる他のお芝居、安東とだいぶ重なっていて、親近感湧いた次第です。また楽しみにしています。
by あんどう (2015-04-29 14:28) 

fujiki

あんどうさんへ
コメントありがとうございます。
「ふたりの女」は第七病棟のスズナリでの再演と、
比較的最近の唐組での上演を観ています。
どうなのでしょうか?
宮城聡さんは、
昔物凄く詰まらないパフォーマンスを、
何度か観て嫌いになってしまったので、
最近は全く観ていません。
でも、評価は高いですし、
食わず嫌いは良くないですね。
良い芝居があったら、教えて下さい。
by fujiki (2015-04-29 19:08) 

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