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慢性心房細動と無症候性脳梗塞との関連性について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
心房細動と無症候性脳梗塞.jpg
今年のAnnals of Internal Medicine誌に掲載された、
心房細動という不整脈と所謂「隠れ脳梗塞」との、
関連性についての論文です。

これはちょっとした小ネタ的なものなのですが、
臨床には直結する意外に重要なものだと思います。

心房細動というのは、
高齢者には非常に多いタイプの不整脈で、
通常は発作性心房細動と言って、
時々発作的に起こるような状態が続いてから、
慢性心房細動と言って、
1日中不整脈が続くという状態に移行します。

この心房細動で最も問題になる合併症は、
心臓の内部に血栓が出来、
それが脳に飛んで起こる脳梗塞(脳塞栓)です。

これは海外データですが、
心房細動が存在すると、
しない場合の4から5倍は脳塞栓を発症するリスクが増加する、
とされています。

この場合の脳塞栓というのは、
通常は麻痺や構語障害などの、
はっきりした症状のある脳卒中の話です。

その一方で心房細動の患者さんは、
1.4倍認知機能低下のリスクが高かった、
というメタ解析の結果が報告されています。

このリスクの増加は、
脳塞栓の発症とは独立したリスクなので、
このことから、
心房細動が存在することにより、
別個に認知症の進行に関わる因子が、
脳塞栓以外にに存在している、
という可能性が示唆されます。

しかし、そのリスクとはどのようなものなのでしょうか?

1つの可能性としては、
症状を出すような脳卒中の発作以外に、
通称「隠れ脳梗塞」と言われるような、
症状の何もない、無症候性脳梗塞を、
知らない間に何度も起こしていて、
それが認知機能の低下に結び付いている、
という可能性が考えられます。

今回の研究はその可能性を明確にする目的で、
これまでの発表された臨床研究のデータを、
まとめて解析する手法を用いて、
心房細動と無症候性脳梗塞との関連性を検証しています。

トータルで5317名の、
明確な脳卒中を発症していない、
心房細動の成人患者さんにおいて、
解剖所見、CT、MRIの3種類の方法により、
無症候性脳梗塞の頻度を解析したデータを、
まとめて解析したところ、
CTとMRIによる検出をまとめたデータにおいて、
心房細動があると、
ない場合と比較して2.62倍有意に、
無症候性脳梗塞の頻度は増加していました。

解剖所見のデータは、
まとめて解析するのには適さないために除外されました。

心房細動を発作性のものと慢性心房細動とに分けて検討すると、
ちょっと意外な感じもしますが、
両者で無症候性脳梗塞の発症リスクには差はありませんでした。
つまり、発作性の心房細動の状態であっても、
矢張り無症候性脳梗塞のリスクは増加する、
という結果になっています。

今回のデータは、
これまであまり指摘されることのなかった、
無症候性脳梗塞の発症と心房細動との関連性を検討したもので、
これまでのデータをまとめて解析しただけのものなので、
まだ確定的なものとは言えませんが、
今後抗凝固剤や抗血小板剤の使用により、
このリスクが低減するものなのかどうかについて、
より厳密な検証が是非必要なように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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AF冠者

発作性2年を経て慢性化2年、脈拍65~85を24時間デタラメ拍動。症状は朝の覚醒時の胸苦、時折起こる胃痛、軽い頭重、一過性のAFについては著書多数ありましたが、慢性化した症状の対処法はなく、みなさん身体に馴れて来る、との説が多く見られますが、いずれの疾病もその症状や軽重は差があることは十分承知していますが、徐脈とも頻脈ともつかないのでワーファリン2錠で月のうち半分は不快の日を過ごしております。Dr,とは世間話、忘れ物多し、ラクナ症候群か、78の加齢か。工事現場(MRI)は気が進みません。病をなおす力も生きる力もあなたにある、東大の先生の言を信じて。
by AF冠者 (2014-11-11 11:09) 

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