麻耶雄嵩「さよなら神様」 [ミステリー]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
今日は日曜日で診療所は休診です。
朝から雨なので駒沢公園には行かず、
今PCに向かっています。
午後は新国立の「パルジファル」に参戦する予定です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ミステリーの鬼才、麻耶雄嵩(まやゆたか)さんの新作です。
麻耶さんは大好きなので、
ほぼ全作品を読んでいます。
ただ、出来不出来の差が激しいのと、
物凄く頭の良い方だと思うのですが、
その極めて知的で入り組んだ世界が、
時として読者を置いて行くようなところがあるので、
とても万人向けとは言えません。
また、ミステリーの基本的な「文法」が前提となっている世界なので、
ミステリー好き以外には、
意味不明のままに終わる作品が大部分です。
しかし、単純にミステリーの枠に収まる作品群ではなく、
常にそこからはみ出す深い世界を内包していて、
文体もミステリー作家としては水準以上のものなので、
ミステリーマニアだけに独占させておくのは、
勿体ないという気もするのです。
今回の「さよなら神様」は連作短編の形式の作品ですが、
ジュブナイルとして書かれた作品の、
続編という体裁を取っていて、
この連作自体は決して子供向きのものではありませんが、
麻耶さんの作品としては敷居が低く簡明に書かれていて、
それでいて内容は極めて独創的かつ、
意外性にも富んだものなので、
彼の代表作の1つと言って間違いでないものですし、
麻耶ミステリーの入門編としても、
推奨の出来る作品だと思います。
以下、大きなネタばれは勿論しませんが、
少し内容には踏み込みます。
先入観なくお読みになりたい方は、
本編読了後にお読み下さい。
この作品は小学高学年の生徒を主人公にしていて、
「青春ミステリ」の味わいもあります。
ただ、小学生という感じは読んでいるとあまりなくて、
中学生くらいの感じに読めます。
小学校の近辺で矢鱈と殺人事件が起こるのはご愛嬌ですが、
上の扉の帯にもあるように、
最大の特徴は主人公の友達で、
自ら「神様」を名乗る少年が、
「犯人は○○だよ」とオープニングで真犯人を告げる、
という様式にあります。
このパターンの構成が、
連作短編の形式で6回続きます。
神様というのは小説では要するに作者のことですから、
謎解きミステリーの筈なのに、
最初にネタばれをしてしまう、
という掟破りのことをしているのです。
これで一体どうやって面白くするつもりなのだろう、
と思うのですが、
ところがどっこい、
制約を逆手にとった論理のアクロバットが続き、
連作短編ではありながら、
前半の謎が後半に有機的に繋がって、
ラストは如何にも麻耶さんという、
解けないパズルが待っています。
前半の捨てネタは詰まらないものもあるのですが、
後半は麻耶さん以外には、
ちょっと書き手のない世界で、
それでいて比較的読み易く、
かつての長編のように、
頭を抱えるような難所もありません。
ラストのメッセージも、
すんなり飲み込めるものでしたし、
麻耶ミステリーの初心者の方にも、
充分その真価を感じて頂けるのではないかと思います。
知的で変な本が読みたい方には、
是非にお勧めしたい逸品です。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
下記書籍引き続き発売中です。
よろしくお願いします。
六号通り診療所の石原です。
今日は日曜日で診療所は休診です。
朝から雨なので駒沢公園には行かず、
今PCに向かっています。
午後は新国立の「パルジファル」に参戦する予定です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ミステリーの鬼才、麻耶雄嵩(まやゆたか)さんの新作です。
麻耶さんは大好きなので、
ほぼ全作品を読んでいます。
ただ、出来不出来の差が激しいのと、
物凄く頭の良い方だと思うのですが、
その極めて知的で入り組んだ世界が、
時として読者を置いて行くようなところがあるので、
とても万人向けとは言えません。
また、ミステリーの基本的な「文法」が前提となっている世界なので、
ミステリー好き以外には、
意味不明のままに終わる作品が大部分です。
しかし、単純にミステリーの枠に収まる作品群ではなく、
常にそこからはみ出す深い世界を内包していて、
文体もミステリー作家としては水準以上のものなので、
ミステリーマニアだけに独占させておくのは、
勿体ないという気もするのです。
今回の「さよなら神様」は連作短編の形式の作品ですが、
ジュブナイルとして書かれた作品の、
続編という体裁を取っていて、
この連作自体は決して子供向きのものではありませんが、
麻耶さんの作品としては敷居が低く簡明に書かれていて、
それでいて内容は極めて独創的かつ、
意外性にも富んだものなので、
彼の代表作の1つと言って間違いでないものですし、
麻耶ミステリーの入門編としても、
推奨の出来る作品だと思います。
以下、大きなネタばれは勿論しませんが、
少し内容には踏み込みます。
先入観なくお読みになりたい方は、
本編読了後にお読み下さい。
この作品は小学高学年の生徒を主人公にしていて、
「青春ミステリ」の味わいもあります。
ただ、小学生という感じは読んでいるとあまりなくて、
中学生くらいの感じに読めます。
小学校の近辺で矢鱈と殺人事件が起こるのはご愛嬌ですが、
上の扉の帯にもあるように、
最大の特徴は主人公の友達で、
自ら「神様」を名乗る少年が、
「犯人は○○だよ」とオープニングで真犯人を告げる、
という様式にあります。
このパターンの構成が、
連作短編の形式で6回続きます。
神様というのは小説では要するに作者のことですから、
謎解きミステリーの筈なのに、
最初にネタばれをしてしまう、
という掟破りのことをしているのです。
これで一体どうやって面白くするつもりなのだろう、
と思うのですが、
ところがどっこい、
制約を逆手にとった論理のアクロバットが続き、
連作短編ではありながら、
前半の謎が後半に有機的に繋がって、
ラストは如何にも麻耶さんという、
解けないパズルが待っています。
前半の捨てネタは詰まらないものもあるのですが、
後半は麻耶さん以外には、
ちょっと書き手のない世界で、
それでいて比較的読み易く、
かつての長編のように、
頭を抱えるような難所もありません。
ラストのメッセージも、
すんなり飲み込めるものでしたし、
麻耶ミステリーの初心者の方にも、
充分その真価を感じて頂けるのではないかと思います。
知的で変な本が読みたい方には、
是非にお勧めしたい逸品です。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
下記書籍引き続き発売中です。
よろしくお願いします。
健康で100歳を迎えるには医療常識を信じるな! ここ10年で変わった長生きの秘訣
- 作者: 石原藤樹
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2014/05/14
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
健康で100歳を迎えるには医療常識を信じるな! [ 石原藤樹 ]
- ショップ: 楽天ブックス
- 価格: 1,296 円
2014-10-05 10:18
nice!(27)
コメント(0)
トラックバック(0)
コメント 0