SSブログ

ビタミンサプリメントの効果をトータルに考える [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ビタミンサプリメントの有効性のメタ解析.jpg
昨年12月のAnnals of Internal Medicine誌に掲載された、
ビタミンとミネラルのサプリメントの効果についての、
包括的なレビューです。

医療費の削減が強く叫ばれる中、
予防出来る病気は医療機関に掛かることなく、
未然に防ぐことが求められる時代になっています。

勿論色々な健康法がありますが、
その中で巨大な産業となっているのが、
所謂サプリメントの使用です。

厳しい食事制限をしたり、
運動などの習慣を継続することよりも、
ただサプリメントを飲むだけで同様の効果が得られるとすれば、
それに飛び付くのはある意味当然のことです。

サプリメントの主体はビタミンとミネラルです。

ビタミンやミネラルは身体に必須の物質で、
その高度の欠乏は多くの病気の原因となることは間違いがありません。
しかし、そのこととこうした物質をサプリメントとして摂れば、
それが病気の予防になることとは同じではありません。

実際にどの程度の効果が、
病気ではない人がサプリメントを摂ることによって期待出来るのでしょうか?

今回の研究においては、
サプリメントの効果を、
心筋梗塞や脳卒中などの、所謂心血管疾患の予防効果と、
癌の予防効果に絞って、
これまでの精度の高い臨床試験の結果をまとめて解析することによって、
検証しています。

2つの大規模な臨床試験の結果として、
10年以上のマルチビタミンの使用は、
男性においてトータルな癌の発症リスクを、
7%有意に低下させていました。
しかし、女性では有意な予防効果は確認されませんでした。

ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、
葉酸、セレン、カルシウム等のサプリメントを、
単独もしくは2種類の組み合わせで使用した臨床試験においては、
その結果は非常にばらつきが大きく、
一定の結論に至りませんでした。

ビタミンEとβカロチンの使用は、
心血管疾患と癌いずれの予防効果もなく、
βカロチンは喫煙者の肺癌リスクを増加させました。

この文献にはあまり触れられていませんが、
ビタミンEに関しては、
その使用により前立腺癌の発症リスクの増加や、
脳出血のリスクの増加を示すデータが存在しています。
ただ、これは全ての場合に良くないということではなく、
その用量やどのような対象に使用するかという、
対象者の選択によって、
良くも悪くもなる、と言う点に注意が必要です。

サプリメントというのはトータルには、
治療薬のような効果の期待出来るものではありませんが、
その中ではマルチビタミンと称されるものは、
多くの物質が含有されているので、
互いの悪影響を相殺する面もあり、
その使用には、
少なくとも悪影響はなく、
場合により癌の予防効果は若干ながら認められる可能性があります。
また、個々のビタミンの欠乏の予防にも、
一定の効果が期待出来ます。

一方でビタミンEやβカロチンなどの、
強い抗酸化作用を持つ物質は、
特に癌に対しては諸刃の剣の要素があります。
過酸化物は細胞を障害し、発癌のリスクを高める一方で、
免疫の維持にも働き、
それを抑え過ぎることは、
却って癌細胞の障害も抑える可能性があるからです。

ただ、抗酸化作用を持つ物質の中でも、
ビタミンCやコエンザイムQ10に関しては、
そうした作用は少なくとも臨床的には報告されておらず、
必ずしも抗酸化作用を持つ物質の全てに、
そうした弊害がある、という訳ではなさそうです。

そんな訳で、
現行サプリメントにはそう大きな期待は持たない方が良く、
ビタミン類に限って言えば、
マルチビタミンの製剤が、
その弊害という面では一番問題が少ないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍引き続き発売中です。
よろしくお願いします。

健康で100歳を迎えるには医療常識を信じるな! ここ10年で変わった長生きの秘訣

健康で100歳を迎えるには医療常識を信じるな! ここ10年で変わった長生きの秘訣

  • 作者: 石原藤樹
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
  • 発売日: 2014/05/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)





nice!(45)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 45

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0