アレルギーの出ないピーナツ作成法について [医療のトピック]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
朝から意見書など書いて、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2013年のFood Chemistry誌に掲載された、
ピーナツアレルギーを起こし難いピーナツの生成法についての論文です。
全く読んだことのない雑誌ですが、
つい最近、
NHK発の医学ニュースで、
報道された内容ですので、
ちょっと興味を持って読んでみました。
ピーナツアレルギーは、
食物アレルギーの中でも、
世界的には頻度が多く、
かつまた重症化し易いことで知られています。
上記文献の記載では、
アメリカ人の1%はピーナツアレルギーを持っているようです。
ピーナツを含むナッツ類は、
近年健康への良い効果が広く知られていて、
その意味でもアレルギーを持つ方が、
一切ナッツ類を食べることが出来ないというのは、
健康の面でも大きな問題となるのです。
そこで、ピーナツアレルギーを何とか阻止するような、
治療法や予防法が何かないか、
という点で研究が進められています。
人間の側から考えると、
微量の抗原から徐々に身体を慣らして行く、
所謂「減感作療法」が一定の効果を上げた、
という報告がありました。
ピーナツの側から考えると、
その栄養素にはあまり影響を与えずに、
アレルギーの原因となる抗原を、
人間に反応させなくするような方法が、
何かないか、という点に多くの試みが行なわれています。
ピーナツアレルギーの抗原蛋白の主なものは、
Ara h 1とAra h 2という名称で2種類が同定されています。
この2つの蛋白質は一種の酵素としての働きを有していますが、
それ自体が除去されても、
ピーナツの栄養価に大きな違いは生じません。
そこで、この2種類の蛋白質をピーナツから除去する方法が、
色々と検討されています。
その第一はこの2つの抗原の遺伝子を、
働かなくなるように遺伝子操作をしたピーナツです。
これは2008年には作成されていますが、
実際には遺伝子を操作した食品に対する、
消費者の危惧があり、
また完全に安全であると保障されるものでもないので、
実用化には食品メーカーのリスクが高く、
未だ製品化はされていません。
紫外線や放射線の照射により、
抗原が変性して抗原性が低下する、
という報告もあります。
ただ、ピーナツが含むそれ以外の脂質も同時に少なからず変性し、
そこに有害な作用が発生する可能性があります。
従って、これも実用化は無理です。
残った可能性として、
上記文献の著者らが取り組んだのは、
ローストしたピーナツに、
抗原の分解に関わる2種類の酵素を反応させて、
抗原性を除去しよう、
という手法です。
これは一定の効果があるのですが、
全ての抗原を除去するには至りません。
そこで上記の文献においては、
ローストしたピーナツに超音波刺激を行なって、
それにより蛋白質の分解を促し、
それに酵素反応を組み合わせることにより、
アレルギーに関わる抗原をより完全に除去しよう、
という試みが検証されています。
上記文献の記載によれば、
この方法により2種の抗原をトータルして、
その98%が除去され、
ピーナツアレルギーの患者さんの血清中の抗体との反応においても、
抗体との結合が阻害されることが確認されました。
今年の6月の時点で、
Xemerge社という企業と研究機関との間で、
この低抗原ピーナツの、
商品化への契約が結ばれたとというニュースが出ていて、
それを読むとNHKが今ニュースにする意味が、
何処にあるのかちょっと不思議に思うのですが、
より抗原除去率を上げるような、
何らかのトピックがあったのかも知れません。
これは実現して、
本当にピーナツアレルギーが臨床的になくなるものであれば、
画期的なものなのですが、
まだ臨床的な効果は未知数だと思います。
完全除去という訳ではないので、
おそらく「通常より安全なピーナツ」という扱いで、
アレルギーの患者さんに対して、
これなら安全、と勧められる、というようなものではないように思います。
ただ、遺伝子操作もなく、放射線や紫外線も使用しないと言う意味で、
安全性は高い方法であることは間違いなく、
ニュース自体には、
何となく宣伝めいた臭いもしますが、
その実用化には期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍引き続き発売中です。
よろしくお願いします。
六号通り診療所の石原です。
朝から意見書など書いて、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2013年のFood Chemistry誌に掲載された、
ピーナツアレルギーを起こし難いピーナツの生成法についての論文です。
全く読んだことのない雑誌ですが、
つい最近、
NHK発の医学ニュースで、
報道された内容ですので、
ちょっと興味を持って読んでみました。
ピーナツアレルギーは、
食物アレルギーの中でも、
世界的には頻度が多く、
かつまた重症化し易いことで知られています。
上記文献の記載では、
アメリカ人の1%はピーナツアレルギーを持っているようです。
ピーナツを含むナッツ類は、
近年健康への良い効果が広く知られていて、
その意味でもアレルギーを持つ方が、
一切ナッツ類を食べることが出来ないというのは、
健康の面でも大きな問題となるのです。
そこで、ピーナツアレルギーを何とか阻止するような、
治療法や予防法が何かないか、
という点で研究が進められています。
人間の側から考えると、
微量の抗原から徐々に身体を慣らして行く、
所謂「減感作療法」が一定の効果を上げた、
という報告がありました。
ピーナツの側から考えると、
その栄養素にはあまり影響を与えずに、
アレルギーの原因となる抗原を、
人間に反応させなくするような方法が、
何かないか、という点に多くの試みが行なわれています。
ピーナツアレルギーの抗原蛋白の主なものは、
Ara h 1とAra h 2という名称で2種類が同定されています。
この2つの蛋白質は一種の酵素としての働きを有していますが、
それ自体が除去されても、
ピーナツの栄養価に大きな違いは生じません。
そこで、この2種類の蛋白質をピーナツから除去する方法が、
色々と検討されています。
その第一はこの2つの抗原の遺伝子を、
働かなくなるように遺伝子操作をしたピーナツです。
これは2008年には作成されていますが、
実際には遺伝子を操作した食品に対する、
消費者の危惧があり、
また完全に安全であると保障されるものでもないので、
実用化には食品メーカーのリスクが高く、
未だ製品化はされていません。
紫外線や放射線の照射により、
抗原が変性して抗原性が低下する、
という報告もあります。
ただ、ピーナツが含むそれ以外の脂質も同時に少なからず変性し、
そこに有害な作用が発生する可能性があります。
従って、これも実用化は無理です。
残った可能性として、
上記文献の著者らが取り組んだのは、
ローストしたピーナツに、
抗原の分解に関わる2種類の酵素を反応させて、
抗原性を除去しよう、
という手法です。
これは一定の効果があるのですが、
全ての抗原を除去するには至りません。
そこで上記の文献においては、
ローストしたピーナツに超音波刺激を行なって、
それにより蛋白質の分解を促し、
それに酵素反応を組み合わせることにより、
アレルギーに関わる抗原をより完全に除去しよう、
という試みが検証されています。
上記文献の記載によれば、
この方法により2種の抗原をトータルして、
その98%が除去され、
ピーナツアレルギーの患者さんの血清中の抗体との反応においても、
抗体との結合が阻害されることが確認されました。
今年の6月の時点で、
Xemerge社という企業と研究機関との間で、
この低抗原ピーナツの、
商品化への契約が結ばれたとというニュースが出ていて、
それを読むとNHKが今ニュースにする意味が、
何処にあるのかちょっと不思議に思うのですが、
より抗原除去率を上げるような、
何らかのトピックがあったのかも知れません。
これは実現して、
本当にピーナツアレルギーが臨床的になくなるものであれば、
画期的なものなのですが、
まだ臨床的な効果は未知数だと思います。
完全除去という訳ではないので、
おそらく「通常より安全なピーナツ」という扱いで、
アレルギーの患者さんに対して、
これなら安全、と勧められる、というようなものではないように思います。
ただ、遺伝子操作もなく、放射線や紫外線も使用しないと言う意味で、
安全性は高い方法であることは間違いなく、
ニュース自体には、
何となく宣伝めいた臭いもしますが、
その実用化には期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍引き続き発売中です。
よろしくお願いします。
健康で100歳を迎えるには医療常識を信じるな! ここ10年で変わった長生きの秘訣
- 作者: 石原藤樹
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2014/05/14
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健康で100歳を迎えるには医療常識を信じるな! [ 石原藤樹 ]
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2014-09-01 08:21
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