三島由紀夫集成(その2) [小説]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
今日は日曜日で診療所は休診です。
先週は嫌なことばかり沢山あって、
なかなか頭の整理が付かないのですが、
どうにか今日のうちに気持ちを少し整えて、
明日からの仕事に引き摺らないようにしたいと思います。
朝から雨なので、
駒沢公園へ走りに行くのは止めました。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
三島由紀夫の全集は揃いで持っているのですが、
正直なところを言うと、
小説はあまり読んでいませんでした。
「金閣寺」と「仮面の告白」、「愛の渇き」と、
後は短編を幾つかくらいです。
それでもういつまで本が読めるか分かりませんし、
最初から通読しようと決めました。
全集は主なものが2回刊行されています。
僕が持っているのは彼の死後すぐに刊行が開始されたもので、
小説は全て収録されていますが、
エッセイや対談の類は全ては入っていません。
ただ、生前の彼の目が入っているものなので、
旧字体が使用されています。
一方でその後数十年経ってから刊行された全集があり、
こちらはほぼ完全版で、
対談の類も全て収録され、
音声のCDや書簡の類、
「憂国」のDVDまで別巻として刊行されています。
しかし、現代仮名遣いに変わっていて、
三島由紀夫は最後まで活字にはこだわっていたので、
とても僕には納得がいきません。
それで旧全集にはない数巻のみ所有しています。
今日はその旧全集の第2巻の覚書です。
第1巻は以前読んだのですが、
文語作品が主体でかなり読み難く、
ストーリーも殆どないような習作が主なので、
とても読み返す元気はないので2巻から始めます。
この第2巻には、
昭和22年から23年に掛けて書かれた、
24編の作品が収録されています。
一般に「假面の告白」が彼の処女長編のようなイメージがありますが、
実際にはその前に「盗賊」という短めの長篇があります。
ただ、あまり出来の良いものではありません。
この第2巻の白眉は、
「頭文字」と「獅子」の2作の短編で、
特に「頭文字」は鏡花の「外科室」辺りを思わせる、
狂熱的な愛情が全開の耽美的な力作で、
一読虜になりました。
戦前の華族社会の道ならぬ恋、
というのが如何にも若き日の三島の着想で、
恋人の死の瞬間、お姫様の白い肌に血文字が浮かぶ、
という強烈な描写が溜まりません。
「獅子」は表書にあるように「王女メディア」の、
戦後の没落華族に当てた翻案で、
後の「愛の渇き」にも繋がるような、
自然主義文学的な情緒の世界です。
三島由紀夫というと、
どうしてもその思想的な背景とその死をもって語られがちですが、
少なくとも彼の死に繋がった思想が反映されている小説はごく僅かで、
殆どの作品はそうしたものとは無関係の世界です。
ただ、真の美は死や破滅をもって完成する、
というファナティックな激情と美意識は、
10代の頃から既に一貫したものではあるのです。
特に「頭文字」はお薦めで、
松本清張さんの「西郷札」や、
鏡花の「外科室」、
西加奈子さんの「空を待つ」などと並べて、
「激情小説傑作選」でも編みたいなと、
秘かに夢想しています。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
六号通り診療所の石原です。
今日は日曜日で診療所は休診です。
先週は嫌なことばかり沢山あって、
なかなか頭の整理が付かないのですが、
どうにか今日のうちに気持ちを少し整えて、
明日からの仕事に引き摺らないようにしたいと思います。
朝から雨なので、
駒沢公園へ走りに行くのは止めました。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
三島由紀夫の全集は揃いで持っているのですが、
正直なところを言うと、
小説はあまり読んでいませんでした。
「金閣寺」と「仮面の告白」、「愛の渇き」と、
後は短編を幾つかくらいです。
それでもういつまで本が読めるか分かりませんし、
最初から通読しようと決めました。
全集は主なものが2回刊行されています。
僕が持っているのは彼の死後すぐに刊行が開始されたもので、
小説は全て収録されていますが、
エッセイや対談の類は全ては入っていません。
ただ、生前の彼の目が入っているものなので、
旧字体が使用されています。
一方でその後数十年経ってから刊行された全集があり、
こちらはほぼ完全版で、
対談の類も全て収録され、
音声のCDや書簡の類、
「憂国」のDVDまで別巻として刊行されています。
しかし、現代仮名遣いに変わっていて、
三島由紀夫は最後まで活字にはこだわっていたので、
とても僕には納得がいきません。
それで旧全集にはない数巻のみ所有しています。
今日はその旧全集の第2巻の覚書です。
第1巻は以前読んだのですが、
文語作品が主体でかなり読み難く、
ストーリーも殆どないような習作が主なので、
とても読み返す元気はないので2巻から始めます。
この第2巻には、
昭和22年から23年に掛けて書かれた、
24編の作品が収録されています。
一般に「假面の告白」が彼の処女長編のようなイメージがありますが、
実際にはその前に「盗賊」という短めの長篇があります。
ただ、あまり出来の良いものではありません。
この第2巻の白眉は、
「頭文字」と「獅子」の2作の短編で、
特に「頭文字」は鏡花の「外科室」辺りを思わせる、
狂熱的な愛情が全開の耽美的な力作で、
一読虜になりました。
戦前の華族社会の道ならぬ恋、
というのが如何にも若き日の三島の着想で、
恋人の死の瞬間、お姫様の白い肌に血文字が浮かぶ、
という強烈な描写が溜まりません。
「獅子」は表書にあるように「王女メディア」の、
戦後の没落華族に当てた翻案で、
後の「愛の渇き」にも繋がるような、
自然主義文学的な情緒の世界です。
三島由紀夫というと、
どうしてもその思想的な背景とその死をもって語られがちですが、
少なくとも彼の死に繋がった思想が反映されている小説はごく僅かで、
殆どの作品はそうしたものとは無関係の世界です。
ただ、真の美は死や破滅をもって完成する、
というファナティックな激情と美意識は、
10代の頃から既に一貫したものではあるのです。
特に「頭文字」はお薦めで、
松本清張さんの「西郷札」や、
鏡花の「外科室」、
西加奈子さんの「空を待つ」などと並べて、
「激情小説傑作選」でも編みたいなと、
秘かに夢想しています。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2014-04-06 13:42
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コメント(2)
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> 「激情小説傑作選」
素敵ですね。今の日本には「激情」が欠けている…。
三島は、「金閣寺」や「仮面の告白」、それと気に入っている短編などはいつも身近に置いて、ふと数ページ読む・・・という愉しみ方もよくしています。
RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2014-04-07 10:02)
RUKOさんへ
コメントありがとうございます。
三島の短編は、切れ味鋭く、
面白いものが多いですね。
それもバラエティに富んでいます。
by fujiki (2014-04-08 08:15)