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妊娠中の禁煙治療の効果について(フランスの話です) [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

本日は石原が研修会出席のため、
午後の診療は午後3時15分で受付終了とさせて頂きます。
ご迷惑をお掛けしますがご了承下さい。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
妊娠中のニコチン治療の効果.jpg
先月のBritish Medical Journal誌に掲載された、
妊娠中の禁煙治療の効果と安全性についての論文です。

妊娠中の喫煙が異常分娩などのリスクを増やし、
お子さんの健康にも影響を与えることは、
多くの疫学データから確認されている事実です。

勿論妊娠をされる前に、
禁煙を実行して頂くのが良いのですが、
現実的には喫煙をされている女性が、
ある時妊娠していることに気付く、
ということが稀ではないのが実際です。

そうした場合、
可及的速やかに禁煙をすることが求められるのですが、
妊娠中に使用出来るような禁煙治療薬は限られています。

ニコチンのパッチによる禁煙の補助療法は、
妊娠中には日本の添付文書では禁忌の扱いですが、
フランスやイギリスにおいては推奨されていて、
アメリカのガイドラインでは言及はありません。

ただ、飲み薬のチャンピックスなどと比較すれば、
妊娠中でも安全に使用出来る薬剤であることは、
ほぼ間違いがありません。

しかし、その妊娠中の禁煙促進の効果は、
現状明確には確認されていません。

今回の研究はフランスの複数の産科施設において、
18歳以上の妊娠された女性で、
喫煙をしていて禁煙の意思のある476例を対象として、
妊娠週数が12週から20週の間で登録を行ない、
くじ引きで2つのグループに分けて、
対象者自身には分からない形で、
一方はニコチンのパッチを使用し、
もう一方は偽の薬効のないパッチを使用して、
それぞれ禁煙の治療を行ない、
その成功率や副作用を検証しています。

ニコチンパッチにはその含有するニコチンの量によって、
幾つかの種類があります。
今回の研究では禁煙治療前に、
唾液のコチニン(ニコチンの代謝物)濃度を測定し、
それを参考にしてニコチン量の調整を行なっています。

その結果…

禁煙開始から出産まで、
完全に禁煙に成功したのは、
ニコチンパッチ使用群で、
解析可能であった192名中5.5%に当たる11名で、
偽のパッチ群では同じく192名中5.1%に当たる10名でした。
つまり、殆ど差は認められません。
禁煙後最初のタバコを吸ってしまうまでの日数などの指標にも、
両群で有意な差は認められませんでした。

ニコチンパッチ群と偽パッチ群とで、
出産したお子さんの体重や状態には、
有意な差は認められませんでしたが、
妊娠中の拡張期血圧は、
ニコチンパッチ群で有意に高い結果となりました。
それ以外には目立ったニコチンパッチの有害事象はなく、
副作用として多かったのは、
皮膚のかぶれでした。

今回の結果をどのように考えれば良いのでしょうか?

妊娠中の禁煙はお子さんの健康に対しても、
影響を与える可能性がある重要な問題ですが、
妊娠中の禁煙の成功率は、
必ずしも高いものではなく、
今回のデータを見る限りニコチンのパッチの使用が、
その成功率を高めるという明確な根拠はありません。
ただ、妊娠中でも比較的安全性の高い方法であることは確かで、
血圧上昇については充分留意する必要がありますが、
それ以外は大きな問題はないと考えて良さそうです。

ただ、繰り返しになりますが、
日本の添付文書上は、
妊娠中の使用は禁忌の扱いですので、
その点はくれぐれも誤解のないようにお願いします。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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