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子宮頚癌検診におけるHPV遺伝子検査の意義について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
HPV併用検診の意義について.jpg
先月のBritish Medical Journal誌に掲載された、
子宮頚癌検診の方法についての文献です。

子宮頚癌検診については、
現行主に2つの方法があります。

1つは細胞診検査で、
これは子宮の入り口の部分から細胞を採取し、
その細胞の顔つきを見て、
癌もしくは前癌病変に結び付くような所見がないかどうかを、
チェックするものです。

現在日本の子宮頚癌検診で、
主に行なわれている方法です。

もう1つはHPV遺伝子検査と呼ばれるもので、
HPV(ヒトパピローマウイルス)の遺伝子を検出するものです。

一部の発癌と関連性のあるHPVの、
慢性の感染が存在すると、
それが数年から10年以上の年月を経て、
癌に進展すると考えられています。

従って、そうしたリスクの高いHPVの、
感染がないかどうかを検査することで、
子宮頚癌になり易いかどうかのリスクを、
判断することが出来るのです。

勿論遺伝子があったからと言って、
全ての方が癌になる訳ではありませんし、
癌そのものを診断するという訳ではありません。

つまり、この検査はあくまで細胞診のような他の検査と、
組み合わせることによって、
より意味を持つ性質のものなのです。

HPV遺伝子検査を利用した子宮頚癌検診には、
幾つかの方法があります。

1つは細胞診との併用検診です。
両方の検査を同時に行なうことで、
検診の精度を上げようという考え方です。

2つ目はまず細胞診を行なって、
そこで細胞に異形成などの変化があった場合に、
それが軽度の変化であっても、
HPV遺伝子検査を追加して、
リスクのあるHPVの感染があれば、
より積極的に組織診などの検査を行なう、
という方法です。

3つ目はまずHPV遺伝子検査を行なって、
リスクのあるHPVの感染のある人には、
より頻回に細胞診の検査を行なう、
という方法です。

いずれの考え方においても、
全く細胞診の検査を行なわない、
ということはないのです。

ただ、リスクのあるHPVの感染のある方では、
より癌のリスクが高いので、
検診を行なう間隔やその結果の判断については、
より慎重であるべきだ、ということになります。

細胞診の検診にHPV遺伝子検査を併用して行なうと、
より多くの癌もしくは癌に結び付く可能性の高い病変が見付かります。

細胞診では紛らわしい病変を見落とすことがあり、
そうした事例でもHPVの感染はあることが殆どなので、
併用することでそうした見落としの事例を拾い上げることが出来るのです。

ただ、これが本当に、
癌のより早期の的確な診断に結び付いているのか、
それとも実際には癌に進行することはない、
疑いのみの病変を沢山見付けているだけなのかは、
これまで明確にはされていませんでした。

つまり、過剰診断の可能性です。

今回の研究はスウェーデンにおいて、
細胞診のみの検診と、
細胞診とHPV遺伝子検査を併用した検診とを比較して、
13年という長期間の経過を観察しています。

32歳から38歳のトータル12527名の女性を登録し、
ほぼ6000名の2つの群に分けて検討を行なっています。

その結果…

癌に進行するリスクの高い、
中等度異形成以上の病変の発見頻度は、
最初の数年はHPV遺伝子併用検診の方が高いのですが、
累積の発見率は年が経る毎に減少し、
6年の累積では、
より癌に近い高度異形成以上の病変の発見率は、
細胞診のみの検診と差がなくなり、
11年の累積において、
中等度異形成以上の発見率も、
両者で差がなくなりました。

つまり、
HPV遺伝子検査を併用すると、
より早い段階で癌に進行する可能性が高い病変が見付かっていて、
決して過剰診断で問題のない病変を、
異常とすることが多いからではない可能性が高い、
ということになる訳です。

一方でHPV遺伝子検査で陰性であった女性では、
その後長期間の観察において、
高度異形成に進行するリスクは低く、
こうした女性での検診の間隔は、
より広く開けても問題はない可能性が高いと考えられました。

現状日本においては、
行政の検診は概ね2年に一度の細胞診のみですが、
HPV遺伝子検査も試験的に導入されていて、
どのように両者を組み合わせるかが、
効率やコストも面も考え合わせると、
難しい選択になりそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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