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高度異形成で治療後の患者さんの長期予後について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
高度異形成治療後の長期予後.jpg
先月のBritish Medical Journal誌に掲載された、
子宮頸部の細胞診で、
高度異形成と診断されて治療された患者さんの、
長期予後についての論文です。
昨日の文献とセットで掲載されたもので、
同じスウェーデンの疫学データです。

現行の日本の子宮頚癌検診は、
主に細胞診という方法によって行なわれていて、
将来的に癌の発生に結び付き易い、
高度異形成(CIN3)という変化が認められると、
予防的にその部位を切り取ったり、
レーザーで焼却したりする治療が行なわれることが一般的です。

癌になる可能性の高い部分を予め取り除くような治療です。

この治療の予後は短期間では非常に良いのですが、
こうした高度異形成の生じるような患者さんは、
その治療後も、
子宮頚癌や膣癌の、
発症のリスクは高いと考えられています。

しかし、その長期予後については、
あまり信頼のおける多数例のデータは存在していませんでした。

今回の文献においては、
スウェーデンにおいて、
15万人余の高度異形成で治療を受けた患者さんの予後を、
その患者さんが高齢になるまで長期間観察し、
子宮頚癌の再発や膣癌の発症リスクと生命予後を検証しています。

その結果…

子宮頸部の高度異形成の治療を行なった患者さんでは、
その後の生涯において、
子宮頚癌や膣癌により死亡するリスクが、
そうした既往のない女性と比較して、
有意に2.35倍上昇する、と言う結果が得られました。

その発生率は、
患者さんが60歳以上で明確に増加し、
70歳以上では死亡リスクの増加も有意になっています。

つまり、
一度子宮頸部の高度異形成にて治療を受けた患者さんは、
60歳以降において子宮頚癌の再発や膣癌の発症が、
明確に増加していて、
70歳以上では死亡リスクの増加にも繋がっているので、
ある程度定期的な子宮頚癌検診は、
継続して行なうことが望ましい、
ということになります。

ただ、現行はアメリカでも、
65歳以上の癌検診は強く推奨はされておらず、
日本においては明確な年齢の上限は設定されていませんが、
実際には受診される方は少数に留まると思います。

高度異形成の治療の既往があれば、
より手厚い検査が望ましいと思われますが、
その点についての明確な指針は現時点ではなく、
今後の検討が必要なように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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