庭劇団ペニノ「大きなトランクの中の箱」 [演劇]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
今日から診療所は連休に入ります。
ちょっとまた奈良まで行って来ますので、
明日は更新はお休みをさせて下さい。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
精神科医でもあるタニノクロウが主催し、
ほぼ全ての作品の作・演出を兼ねる、
庭劇団ペニノの公演が、
4月29日まで森下スタジオで上演されました。
これは青山の古いマンションの1室を改造した、
劇団のアトリエであった「はこぶね」で、
上演された3つの作品を1つに再構成したものです。
「はこぶね」のあったマンションは取り壊される予定なので、
今回はその総集編というか、
クロニクル的な作品になっています。
ペニノはその凝りに凝ったセットや美術と、
常人では理解不能な発想の物語が特徴の、
劇団というよりはタニノクロウによる前衛的ユニットのようなものです。
僕はこれまでに、
10回くらいは観劇していますが、
一度も内容が分かったことはありません。
もう東京の公演は終わっていますが、
以下ネタばれを含む感想です。
今回の作品はそれでも比較的分かり易いもので、
悶々と勉強を続けていた受験生の男子が、
押し入れの中で巨大なお父さんの男根に、
エロスを感じてオナニーをし、
エロチックで奇怪な幻想の世界に入る、
という如何にもペニノらしい艶笑奇談です。
これまでの3つの公演で使用された、
単独でも非常に緻密に造られたセットを、
やや簡易化はされているものの、
廻り舞台に全て仕込み、
最後にはそれが旋回して異様な世界が展開されます。
登場するのは4名で、
巨大な男根を持つ巨人のお父さんと、
その43歳で未だ受験生の息子、
そして息子の幻想世界に登場する、
ヤギ女と豚女です。
イメージの多くは恥ずかしくなるような性的なもので、
男根型のチェスの駒や、
男根型の白い椅子や机、
丸太から滴り落ちる白い液体や、
巨大な甲虫の幼虫が孵化してゴキブリに変異する瞬間の模型などが、
次々と登場します。
台詞はありますが、
演劇の台本に本来不可欠なリズムがないので、
聴いていても落ち着かなく、
イライラする気分になります。
しかし、
牛に化けた巨大なお父さんが、
後ろ向きでピアノを弾いたり、
男根型の笛で「バッヘルベルのカノン」を、
4重奏で演奏したりと、
音楽的な見せ場も用意され、
その突き抜けたビジュアルセンスとも相俟って、
観劇後に損をした気分にはなりません。
タニノクロウの芝居は、
寺山演劇に少し似た部分があります。
通常の演劇のセオリーを無視し、
流れの良い台本を作らない点や、
エロチックで幼稚な妄想を、
臆面もなくそのままビジュアル化するセンス、
そして役者の演技に殆ど期待せず、
「巨大なお父さん」のような記号として、
役者を扱うその手際などです。
ただ、
観客を巻き込んだ空間を構成したり、
役者の肉体演技そのものを見世物にしたり、
完全暗転をしたりと言った部分では、
寺山芝居とは違います。
ペニノの芝居は、
あくまで客席とは仕切られた、
カーテンの向こうで繰り広げられる世界です。
僕は正直そう好きではありません。
素朴に精神科医で芝居もしていると言うと、
羨ましいなとは思いますが、
好きな世界ではありません。
ただ、
常識的な多くの人は、
受験生が押し入れでオナニーをする時の妄想を、
そのまま舞台化しようなどとは、
とても恥ずかしくて考えても実行はしませんから、
やはりタニノクロウは常人ではなく、
そこがペニノの芝居の一番の魅力なのだと思います。
それではそろそろ出掛けます。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
六号通り診療所の石原です。
今日から診療所は連休に入ります。
ちょっとまた奈良まで行って来ますので、
明日は更新はお休みをさせて下さい。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
精神科医でもあるタニノクロウが主催し、
ほぼ全ての作品の作・演出を兼ねる、
庭劇団ペニノの公演が、
4月29日まで森下スタジオで上演されました。
これは青山の古いマンションの1室を改造した、
劇団のアトリエであった「はこぶね」で、
上演された3つの作品を1つに再構成したものです。
「はこぶね」のあったマンションは取り壊される予定なので、
今回はその総集編というか、
クロニクル的な作品になっています。
ペニノはその凝りに凝ったセットや美術と、
常人では理解不能な発想の物語が特徴の、
劇団というよりはタニノクロウによる前衛的ユニットのようなものです。
僕はこれまでに、
10回くらいは観劇していますが、
一度も内容が分かったことはありません。
もう東京の公演は終わっていますが、
以下ネタばれを含む感想です。
今回の作品はそれでも比較的分かり易いもので、
悶々と勉強を続けていた受験生の男子が、
押し入れの中で巨大なお父さんの男根に、
エロスを感じてオナニーをし、
エロチックで奇怪な幻想の世界に入る、
という如何にもペニノらしい艶笑奇談です。
これまでの3つの公演で使用された、
単独でも非常に緻密に造られたセットを、
やや簡易化はされているものの、
廻り舞台に全て仕込み、
最後にはそれが旋回して異様な世界が展開されます。
登場するのは4名で、
巨大な男根を持つ巨人のお父さんと、
その43歳で未だ受験生の息子、
そして息子の幻想世界に登場する、
ヤギ女と豚女です。
イメージの多くは恥ずかしくなるような性的なもので、
男根型のチェスの駒や、
男根型の白い椅子や机、
丸太から滴り落ちる白い液体や、
巨大な甲虫の幼虫が孵化してゴキブリに変異する瞬間の模型などが、
次々と登場します。
台詞はありますが、
演劇の台本に本来不可欠なリズムがないので、
聴いていても落ち着かなく、
イライラする気分になります。
しかし、
牛に化けた巨大なお父さんが、
後ろ向きでピアノを弾いたり、
男根型の笛で「バッヘルベルのカノン」を、
4重奏で演奏したりと、
音楽的な見せ場も用意され、
その突き抜けたビジュアルセンスとも相俟って、
観劇後に損をした気分にはなりません。
タニノクロウの芝居は、
寺山演劇に少し似た部分があります。
通常の演劇のセオリーを無視し、
流れの良い台本を作らない点や、
エロチックで幼稚な妄想を、
臆面もなくそのままビジュアル化するセンス、
そして役者の演技に殆ど期待せず、
「巨大なお父さん」のような記号として、
役者を扱うその手際などです。
ただ、
観客を巻き込んだ空間を構成したり、
役者の肉体演技そのものを見世物にしたり、
完全暗転をしたりと言った部分では、
寺山芝居とは違います。
ペニノの芝居は、
あくまで客席とは仕切られた、
カーテンの向こうで繰り広げられる世界です。
僕は正直そう好きではありません。
素朴に精神科医で芝居もしていると言うと、
羨ましいなとは思いますが、
好きな世界ではありません。
ただ、
常識的な多くの人は、
受験生が押し入れでオナニーをする時の妄想を、
そのまま舞台化しようなどとは、
とても恥ずかしくて考えても実行はしませんから、
やはりタニノクロウは常人ではなく、
そこがペニノの芝居の一番の魅力なのだと思います。
それではそろそろ出掛けます。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2013-05-03 05:54
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